神戸の和田岬線に乗ってみた 休日は2往復だけ「都会のローカル線」、廃止の可能性は

廃止の話も浮上しているが…

 和田岬線の利用者は多いとはいえないものの、廃止しなければならないほど少ないわけでもありません。ところが神戸市は2011(平成23)年2月、和田岬線の廃止を求める要望書をJR西日本に提出しました。

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兵庫運河をまたぐ「和田旋回橋」(2019年1月28日、草町義和撮影)。

 沿線の自治体が鉄道路線の廃止を要望するとは異例ですが、これは和田岬線が「まちづくりの障壁」とされたためです。

 和田岬線の中間には、兵庫運河をまたぐ小さな橋「和田旋回橋」があります。中央の橋脚を中心に橋桁が回転する構造で建設され、船舶を通せるようにしていました。しかし、現在は橋桁が橋脚に固定されており、背の高い船舶の通行は困難です。

 一方、神戸市は兵庫運河周辺地域の活性化のため「運河を巡る船の運航や歩行者が回遊できるルートの整備を検討」(2011年2月15日付け神戸新聞夕刊)しましたが、和田岬線の橋や踏切があるため、船の運航や歩行者回遊ルートの整備が困難でした。そのため、和田岬線の廃止が浮上したのです。

 このほか、神戸市が廃止を求めた背景として「海岸線の利用促進を図る狙い」(2011年2月15日付け神戸新聞夕刊)もありました。神戸市営地下鉄海岸線の利用者数は開業前の予測を大幅に下回っており、和田岬線の廃止で利用者を海岸線に誘導しようというわけです。2011(平成23)年2月22日の神戸市議会では、当時の副市長が「(和田岬線の利用者が海岸線に移ると)約4億円の増収となる見込みでございます」と答弁しました。

 ただ、JR西日本は「『地元の総意』を条件に廃線を検討する姿勢」を示したものの、「廃線によって乗換駅でなくなるJR兵庫駅周辺の商店街からは反発の声」(2012年1月5日付け朝日新聞大阪夕刊)が上がったこともあってか、特に進展はみられません。

 いつか「地元の総意」により、和田岬線が廃止される日が来るのでしょうか。

【了】

【地図】休日2往復! 和田岬線のルート

Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)

鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 結局は通勤客のことを軽視して地下鉄に誘導したいが為に廃止を求めている。。。ということか。
    新長田は快速すら止まらないし、地下鉄に乗り継ぐことで運賃も大幅に上がることだろう。
    まず廃止はないと思う。