戦車の砲弾、射撃後の空薬莢はどう処理するの? 狭い砲塔、溜まる薬莢、しかも熱い!

演習や訓練ではポイポイ投棄するの?

 自衛隊の射撃訓練における、銃砲弾の管理の厳しさはよく知られています。射撃前にまず弾数を確認して受領し、撃ち終わった後には返納する薬莢の数をまた確認し、両方の数が完全に一致しなければなりません。1発でも足りないとなれば、発見されるまで捜索になります。

 そのため実際のところ、陸上自衛隊の戦車部隊が、訓練する際に薬莢を投棄することはありません。射撃訓練では、その訓練内容に必要なだけの砲弾を搭載し、乗員交替や訓練の区切りのさいに薬莢を戦車から下ろし、弾薬を扱う係の隊員に一旦返納します。

 また、実戦を模した大規模演習などでは「バトラー」と呼ばれる模擬交戦装置、もしくは空包を使用します。空包は真ちゅう製の筒の中に火薬を充填したもので、発砲(といっても弾は飛び出しません)後は砲弾の薬莢と同様、撃ち殻が残りますが、これは訓練終了まで砲弾ラックに収めておきます。弾の出ない空包とはいえ、弾薬と同様に扱われ、これもきちんと返納しなければなりません。

 自衛隊がタイムスリップする映画のように、演習だからといって必ず実弾を持っているとは限らないのです。

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訓練や記念行事などで使用される空包。この薬莢が燃えることはない(月刊PANZER編集部撮影)。

 ちなみに、これまで薬莢が溜まらないよう工夫されている実情を述べてきましたが、例外もあります。74式戦車の射撃訓練では、1回の射撃機会中(射撃レーンに進入中)に数回の射撃を行うことがあります。この間に薬莢を回収し、砲弾ラックに格納することはできません。

 理由はふたつあります。まず、上述したように薬室から排出された薬莢は、素手で触れると火傷をするほど非常に熱くなっているからです。装填手は手袋を着用していますが、それでも熱を感じます。そのため訓練中ということもあり、あえて転がしておき、熱が冷めてから回収するためにそのまま放置するのです。

 もうひとつは、薬莢の落下位置によっては装填手が砲尾部の後方に入る可能性があるためです。砲弾を発射すると、砲尾は瞬間的に後方に下がり、また元に戻るといった動きをします。これを「後座」もしくは「復座」と呼びますが、後座の瞬間に砲尾部後方に装填手が手足や身体を入れた場合、後方に下がった砲尾と砲塔内側に挟まれて重大な事故となるため、射撃訓練のあいだは安全管理上、いかなる理由であれ、砲尾部後方に装填手が入ることは厳禁とされています。

 このように、訓練の内容によっては薬莢を戦闘室底面に転がしたまま続行する場合もあるのです。

【了】

【写真】燃える薬莢、90式戦車の120mm砲弾

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Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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