船への浸水どう防ぐ? 軍艦には欠かせない「ダメージコントロール」とは
ダメコン成功例「『フィッツジェラルド』衝突事故」
こうしたダメージコントロールが功を奏した例が、実は近年、日本近海で見られました。アメリカ海軍のイージス艦「フィッツジェラルド」が、貨物船と衝突した事故です。
2017年6月17日未明、訓練を終えて静岡県伊豆半島沖を航行していた「フィッツジェラルド」は、フィリピン船籍の貨物船が接近していることに気づかず衝突し、艦内の居住区や通信室などに浸水が発生しました。また、衝突の衝撃で艦橋の一部が押し曲げられるなど船体構造がダメージを受けたほか、漏電や有毒な煙霧まで発生し、まさに運用開始以来の、絶体絶命の危機を迎えたのです。
しかし、この危機から「フィッツジェラルド」を救ったのが、同艦の乗員たちでした。前述したような危険な状況下にもかかわらず、乗員は被害を受けた区画において16時間連続でダメージコントロールを実施し、見事「フィッツジェラルド」を母港である神奈川県横須賀基地へと帰港させたのです。
この事故により、「フィッツジェラルド」は結果として、居住区への浸水で7名の乗員の命を失ったほか、船体にも大きなダメージを受けてしまいましたが、乗員たちの懸命の努力によって幸い沈没は免れました。後日、アメリカ海軍は懸命のダメージコントロールによりさらなる人命損失を防ぎ、艦を守った功績をたたえ、「フィッツジェラルド」の乗員36名に対して勲章を授与しました。
ダメージコントロールは戦闘中のみならず、このように平時から重要性の高いものです。今回、「モントローズ」の公開によって、イギリス海軍によるダメージコントロールに対する努力の一環を垣間見ることができました。
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