戦艦+空母=最強? を実際にやった「航空戦艦」、旧海軍「伊勢」「日向」の一部始終

「航空戦艦」実は問題山積

 こうして「航空戦艦」として戦力化された「伊勢」「日向」でしたが、「空母と戦艦の両方の性能を持っているからこそ最強」とはなりませんでした。

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1944年の「レイテ沖海戦」でアメリカ空母艦載機が撮影した「伊勢」(画像:アメリカ海軍)。

 なぜなら、まず戦艦として大口径砲を搭載した場合、その大きさから船体の中心線をはずして搭載することができません。左舷寄りや右舷寄りに大口径砲を搭載すれば、一発発射しただけでバランスを崩し、後の照準がつけられなくなり、なおかつ副砲を含めたほかの砲の射撃にも影響を与えてしまいます。中央に「どっかり」と主砲が居座っている以上、同様に大きなスペースを要する艦載機用の飛行甲板の設置は難しくなるのです。

 また仮に、この主砲と飛行甲板の問題が解決できたとしても、次の課題は艦載機です。航空機の発着艦は非常にデリケートで、主砲の射撃時は、艦が揺れるため艦載機の運用はできません。場合によっては主砲の射撃時の衝撃で航空機が破損してしまうため、甲板上に並べることはできず、艦内に収容する必要が生まれるでしょう。

 加えて、艦載機用の格納庫や燃料タンクは、船体内部の場所によっては主砲の旋回を限定してしまううえ、逆に甲板上では敵の攻撃にさらされやすく、大変危険な艦になってしまいます。

 そのほかにも、艦の上部が重くなりやすく(トップヘビー状態)バランスが取りにくい、主砲の存在意味がなくなる、など様々な問題が噴出しましたが、当時の日本海軍首脳部はそんな欠点に耳を貸している暇はなく、とりあえず艦載機運用が可能な軍艦が1隻でも欲しい状態であり、むしろ「空母としても使える能力を持つ戦艦」として航空戦艦を生み出したのです。

 そのため、戦艦と空母の両方の長所を兼ね備えた「最強軍艦」としてではなく、「航空機の運搬が可能な戦艦」として「伊勢」と「日向」を戦場に送り出した、というほうが真相に近かったといえるでしょう。

 結局、「伊勢」と「日向」は、戦場で航空戦艦として結果を出すことができませんでした。しかもその理由は、上記のような多数の欠点からではなく、艦載機がなかったからという、根本的な問題でした。

【写真】終戦前後、呉で大破着底する「伊勢」「日向」

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コメント

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1件のコメント

  1. こんなどっち付かずのゴミなんか造るから…