空自の新型空中給油機KC-46A 見た目変わらぬ従来機KC-767とはどこがどう別モノなのか
「戦闘」と「災害支援」に向けて
筆者(軍事ジャーナリスト:竹内修)は2019年3月にアメリカで、ボーイングのKC-46A担当副社長兼副プログラム・マネージャーであるジェイミー・バーガス氏からKC-46Aについての説明を受けましたが、その席でバーガス氏が、KC-46Aは単なる空中給油・輸送機ではなく、「戦闘空中給油・輸送機」であることを強調していた点が印象に残っています。
KC-46Aの操縦席と胴体下部の燃料タンクは防弾化されており、またその燃料タンクの収容スペースは、万が一被弾した場合でも誘爆しないよう、不活性ガスで満たされています。
加えてレーダー警戒装置や、赤外線誘導ミサイルの誘導を妨害する装置を備えているほか、生物/化学兵器が使用された環境下や、核爆発によって電磁パルスが発生した環境下でも任務が継続できます。さらにAPU(補助動力装置)を使用すれば、搭乗員が機内に搭乗してから約10分間で発進する能力も備えています。
筆者がバーガス氏から受けた説明で、もうひとつ印象に残ったのが、KC-46Aが地上で駐機している状態でも、ほかの航空機に給油する能力を備えている点です。2011年3月11日に発生した「東日本大震災」では、捜索救難にあたる航空機の活動拠点となる空港への、円滑な燃料の輸送と給油が大きな課題として残りましたが、駐機状態での給油が可能なKC-46Aは、この課題の解決策のひとつになるのではないかと筆者は思います。
バーガス氏によればKC-46Aは2019年3月の時点で、F-35Aを含む航空機に3800回、約400万ガロン(約1514万リットル)の空中給油試験を行なっており、将来的にはアメリカの同盟国・友好国が運用する約64種類の航空機への空中給油能力付与が計画されているとのことです。アメリカ空軍への機体の引渡しは2019年1月10日から開始されており、気になる航空自衛隊の初号機の引渡し時期についてバーガス氏は、2021年初頭を目標にしていると述べています。
【了】
※誤字を修正しました(8月4日9時45分)。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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