異形の戦車「Sタンク」 砲塔など不要! スウェーデンの「未来戦車」は何を目指した?

「戦車」はその黎明期こそ試行錯誤が見られたものの、WW2後はおおむね定番のスタイルに収束していきました。ところが1960年代、スウェーデンが完成させた通称「Sタンク」は、定番から外れる異形で、新機軸を盛り込んだものでした。

「未来戦車」使ってみるとどうだったか

 1967(昭和42)年にノルウェーがドイツ製「レオパルド1」戦車と比較試験をした際には、ハッチが閉じた状態ではSタンクの方が先に目標を発見し、先に目標に命中弾を与えたそうです。1968(昭和43)年にはイギリスがボービントンにある陸軍戦車学校でテストし、砲塔無しの方が有利と報告しました。1973(昭和48)年にはイギリスの戦車乗員が操縦して、同国製チーフテン戦車と9日間の訓練を実施しましたが、可動率は90%以上を維持したそうです。1975(昭和50)年、アメリカのフォートノックスにある機甲センターで行われたテストでは、アメリカ製M60A1E3戦車よりも射撃精度は良いが、意外にも発射速度は、手動装てん式より平均で0.5秒遅いと報告されています。

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Sタンク最終生産型のStrv103C型。前面に柵状装甲とサイドスカートが追加されている(月刊PANZER編集部撮影)。

 Sタンクは前述のように、車高が低くて見つかりにくく、守りの待ち伏せをしている時はよいのですが、移動しながら攻撃するような場合には使いがたかったようです。旋回しやすいよう履帯の接地面積を小さくしたため悪路に弱く、低い車高から伸びる長い砲身が地面の起伏に引っ掛かったりもしたそうです。

 平べったい傾斜した装甲は弾を弾きやすそうですが、装甲の厚さは車体前面でも60mm程度と薄く、APFSDS弾と呼ばれる槍のように細くとがった徹甲弾(運動エネルギー弾とも)は、傾斜装甲にも突き刺さるので、命中すれば貫通されてしまいます。

 このように、Sタンクは注目されたものの、実際に採用したのはスウェーデンだけでした。1967(昭和42)年から1971(昭和46)年までに290両が生産され、照準器や射撃管制システム、エンジンなどを換装し、防御力を増すために成形炸薬弾(HEAT弾、化学エネルギー弾とも)が車体に当たる前に炸裂させてしまう柵状装甲やサイドスカートが追加されるなど改修され、スウェーデン陸軍にて使われ続けましたが、それも1997(平成9)年に限界を迎えます。

 結局、「未来戦車」とまで称されたSタンクこと「Strv.103」も、21世紀を前に全車退役し、砲塔のあるスタンダードな形の、ドイツ製「レオパルド2」に交代しました。定番の形がやはり一番、使い勝手が良いようです。

【了】

【写真】これぞスタンダード! 現代にいたる戦車の原型、ルノーFT17軽戦車

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

1件のコメント

  1. 砲塔が無いなら戦車ではなく自走砲です

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