香港~深セン「越境」高速鉄道に乗ってみた デモで「混乱」のなか、列車は定刻運行

乗る前に終わった中国本土への「入境」

 自動改札機を通って荷物検査場へ。客の姿は非常に少なく、すぐに通過。続いて地下の出境審査も長い列ができるほどではなく、難なく通過できました。「1国2制度」の関係にある香港と中国本土を行き来する場合、出入国と同じ手続きが必要。香港西九龍駅から中国本土に向かう列車も、実質的には国境を越えて走る国際列車です。

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広深港高速鉄道の香港西九龍駅(2019年9月7日、草町義和撮影)。

 出境審査場の先に伸びる伸びる通路の脇に免税店があり、空港の免税エリアとよく似ています。しかし、通路を歩いて行くと、早くも中国本土の入境審査場が現れました。まだ中国本土に入っていないどころか、列車にも乗っていません。

 これは出入境審査を同じ場所で行い、手続きの効率化を図るもの。フランスのパリ北駅からイギリスに向かう国際列車「ユーロスター」に乗る場合も、パリ北駅で出国だけでなく入国審査も行っています。また、従来からある香港~深セン間の出入境審査場のうち1か所(深セン湾口岸)は、中国本土側に香港の審査場も設置。香港西九龍駅はこれとは逆のパターンです。

 入境審査場には指紋を読み取る装置があり、両手10本すべての指紋を取られるという厳しさですが、ここも閑古鳥が鳴いていて、審査はすぐに終了。ここから先は香港の地であっても手続き上は中国本土領内で、中国本土の法令が適用されます。

 香港は1997(平成9)年にイギリスから中国に返還されたあとも、中国本土から独立した自治権を持つ地域ですが、中国本土の法令が適用される鉄道施設が香港内に整備されたわけで、自治権が侵害されたと考える人もいます。これもデモの背景にあるといえるでしょう。

 入境審査の次は中国本土側の荷物検査があり、ここを抜けると待合スペースに到着。スムーズに進みましたがチェックポイントが多く、自動改札機からの所要時間は20分弱でした。発車時刻の案内を見ると、列車の多くは深セン市内の深セン北行きや福田行きですが、「北京」「廈門(アモイ)」などの文字も見えます。一部の列車は別の高速鉄道に乗り入れ、香港から中国各地へ直通しているのです。

【地図】広深港高速鉄道のルート

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