潜水艦の舵は「十」から「X」へ、どう進化? 45度傾けるのが効果的だけど難しい理由

4枚の舵を制御するのが難しい理由

 ではなぜ、潜水艦は最初から「X」舵を取り入れてこなかったのでしょう。それは「X」舵は制御が難しいからです。

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おやしお型(手前)とそうりゅう型(奥)の後舵のアップ(2019年10月、柘植優介撮影)。

 十字舵は、前述したように上下2枚の縦舵で左右の動き、左右2枚の横舵で上下の動きを行います。ということは、上下の舵と左右の舵は動きが一緒で済み、細かな制御は必要ありません。だからこそ油圧シリンダーが2本のみで済むともいえるでしょう。

 コンピューター制御される前のはるしお型潜水艦までは、縦舵と横舵で各々操舵手が操作し、2名が連携しなければ潜水艦は3次元に動くことができませんでした。次のおやしお型ではコンピューター制御が導入されて、1名の操舵手で縦舵と横舵の両方を操れるようになりましたが、それでも細かい動きの制御までは難しく、後舵は十字のままでした。

 それに対しX舵は、4枚それぞれが違う動きを担うことで、上下左右に動いています。この4枚の舵、すなわち4本のシリンダーを同時制御するのが難しいため、そうりゅう型の登場まで海上自衛隊の潜水艦には採用されていませんでした。

 それがそうりゅう型で可能になったのは、舵の制御に、おやしお型以上に高性能なコンピューターが導入されたからです。コンピューターが4枚の舵を一括して制御するため、そうりゅう型の操舵はゲーム機のようなジョイスティックに一新され、ハンドル式の舵輪と比べてより細かな操舵が可能になっています。

 X舵はこのように、十字舵と比べて構造が複雑で制御が難しいというデメリットがあるため、導入している国は少ないですが、日本やヨーロッパでは主流です。性能的にはメリットが大きいため、今後日本の潜水艦はX舵になっていき、十字舵はおやしお型潜水艦が見納めになりそうです。

【了】

【写真】退役した潜水艦「あきしお」の操舵手席

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

2件のコメント

  1. 『そもそも潜水艦の舵は、海中という3次元空間を動き回れるように作られたものです。水上の艦艇とは異なり、潜水艦の舵には前後左右だけでなく上下への動きも求められるのです。従来の「十字舵」の場合、上下に設けられた縦舵が左右の動き、左右の横舵が上下の動きを担い、舵に求められる機能としては、これで必要十分なものです。』

    違うでしょ。
    3次元でなんでしょ。
    艦は傾くんだが。

  2. 「鎮座」ではなく
    「沈座」では?

    ちょっと気になりました。