ガツンと増強オーストラリア海軍 その内容と狙い 日本とも関係強化 目指す先は?
日豪関係は大きく進展 その背景と狙いやメリットは?
オーストラリアは日本などと異なり、これまで周辺に大きな脅威となる国が存在していなかったことから、冷戦終結後のオーストラリア軍は自国の防衛に加えて、同盟国であるアメリカや、緊密な関係にあるニュージーランドと共同歩調を取れるレベルの戦力を維持してきました。
しかしオーストラリア政府は2009(平成21)年に、中国をはじめとする地域諸国の軍事力強化に対抗するため、軍を強化する方針に転じます。オーストラリアはアメリカや日本などと同様、海洋の航行の自由を重要視しており、南シナ海や太平洋などで力による現状の変更も辞さない中国をけん制するため、海軍力の強化に乗り出しました。
ただ、オーストラリア1国の海軍力の強化には限界があります。また同盟国のアメリカ海軍も、中国の急速な海軍力の強化により、地域におけるプレゼンス(存在感や影響力)は相対的な低下を余儀なくされています。そこでオーストラリアは、アメリカの有力な同盟国である日本および、アジアでは屈指の戦力を保有する海上自衛隊との関係強化を進めている、というわけです。
オーストラリアとの関係強化は、日本にとっても大きなメリットがあります。日本は少子高齢化が進んでおり、自衛隊の定員確保は年々困難になりつつあります。特に海上自衛隊は定員確保が深刻で、このままでは艦艇は建造できても、乗員不足で艦艇が動かせなくなることも懸念されています。
現在の海上自衛隊は日本近海だけでなく、インド洋や太平洋などでも活動していますが、こうした活動をオーストラリア海軍と共同で行なえば、艦艇の総隻数が減少したとしても、海上自衛隊はインド洋や太平洋でのプレゼンス(影響力)を維持することができます。
そう遠くない将来、オーストラリア海軍のキャンベラ級に航空自衛隊が導入するF-35Bが搭載されたり、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦をハンター級フリゲートが護衛して、南シナ海やインド洋をパトロールしたりする、そんな光景が見られるのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
【了】
※誤字を修正しました(11月27日13時00分)。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
艦首にスキージャンプ台のような傾斜を設けたオーストラリア海軍の教習揚陸艦「キャンべラ」(竹内 修撮影)。
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艦首にスキージャンプ台のような傾斜を設けたオーストラリア海軍の強襲揚陸艦「キャンべラ」(竹内 修撮影)。
でしょうか。
北野 純様
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