もうひとつの500系新幹線「WIN350」 熾烈な飛行機との戦いに挑んだ高速試験電車

航空機という強力なライバルを持つ山陽新幹線。500系新幹線の300km/h運転に向け、500系900番台を名乗った試験車両に「WIN350」があります。丸い車体など独特な風貌の意味は何なのでしょうか。

様々な試験のために最小限に抑えられた設備

 もちろん室内高1920mmというのは相当な圧迫感があるので、とても営業運転には使えません。では何のために低くしたのかというと、屋根の上にダミーの屋根を載せて車高を変化させ、騒音の発生具合を実験するためです。車体は徹底的に軽く造り、そこに死重(おもり)を積み、車重変化による振動や騒音の変化を確認できるようになっています。

 また、窓やドアの段差による騒音がどのくらいかを実験するため、4号車を除くほとんどの車両は窓が最小限しかありません。また、ノーズの長さは前後で異なります。1号車は6.7m、6号車は、高速走行に伴いトンネルの出口などで発生する空気の圧力波対策で10.1mとし、空気の流れを考えた形状とされました。

 このようにWIN350は様々なパーツが付加され、あらゆる試験に対応できるようデザインされたのです。

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東海道新幹線を走る500系電車。WIN350の試験結果が随所に反映された(画像:写真AC)。

 WIN350は1992(平成4)年4月、博多総合車両所に配属。ここを拠点に6月初旬に性能確認試験を始め、350km/hを目指した高速運転を行いました。この際に小郡(現在の新山口)~新下関間は、350km/h運転に耐えられるよう地上設備を強化しています。

 高速試験は順調に進み、同年8月8日には目標となる350.4km/hを達成。その後は300km/h運転での環境性能、すなわち周囲に与える騒音・振動の影響、乗り心地などの試験が行われました。

 試験の結果、350km/h走行は可能でも、環境省が示す基準に騒音を抑えきれなかったことや、曲線区間で横方向に働く加速度の課題などが残りました。さらにブレーキ性能や経済性の問題など総合的な判断から、500系電車の最高速度は300km/hとされました。

【写真】500系車内で「運転ごっこ」ができる模擬運転台

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