ベンツ「ウニモグ」なぜそう多機能なの?WW2敗戦国ドイツゆえのクルマ 装甲車に草刈り
実は日本国内でもあちこちで活用されている「ウニモグ」
「ウニモグ」は日本でも多数の車体が導入されており、高速道路会社がトンネルの壁面清掃や照明器具の保守に、また日本中央競馬会(JRA)が競馬場の馬場の保守作業にと、様々な用途でこれを使用しています。
鉄道の線路(軌道)の上を走行するための装置を「ウニモグ」に装着すれば、線路上と道路を自由に行き来し走行できる「軌陸車」として使用することができます。軌陸車としての「ウニモグ」は東北、北陸、九州、北海道の各新幹線が建設された際に輸送用車両として大活躍したほか、レールの検査や電線の保守、線路脇の草刈り、除雪作業などにも使用されています。
神奈川県警や関西電力などは、災害発生時の人命救助やインフラの復旧用に「ウニモグ」を導入しています。高いオフロード走行性能を持つ「ウニモグ」は、災害により舗装道路が使用できず、一般のトラックなどが走行できない環境でも運用できます。
2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災でも、大阪府の緊急消防援助隊などの「ウニモグ」が救助、復旧活動に投入されたほか、ダイムラーが公益、福祉事業などを手掛ける公益財団法人 日本財団に寄贈した4台の「ウニモグ」も、道路が寸断された被災地の復興活動で活躍しています。
また2015年9月に発生した関東・東北豪雨では、現場で走行可能な車両が「ウニモグ」のみだったことから、人命救助活動の主力として活躍し、約50名の被災者を救助しました。
前にも述べたように、「ウニモグ」は特殊車両でありながら、高速道路や競馬場などで目にすることができます。第2次世界大戦の敗戦によって工業生産基盤を破壊されたドイツが、苦肉の策として生んだ「ウニモグ」が、同じ第2次世界大戦の敗戦国である日本のインフラの維持や大規模災害の救助、復旧で大活躍しているという歴史を踏まえて見ると、いままで単なるトラックに見えていた「ウニモグ」が、ちょっと違った形で見えてくる……かもしれません。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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