缶ジュース持込禁止 独特な存在 海自「掃海隊」 太平洋戦争 ここではまだ続く

一般の艦艇とは運動性とスケール感覚が違う

 掃海艇におけるスケール感は、一般の艦艇とは異なるものです。「スケール感の違い」とは、単に掃海艇が小さいということではなく、掃海作業のためには細かく操舵しなければならないことによるものです。

 ヘリコプターには、空中の一定の位置に留まる「ホバリング」という飛び方がありますが、掃海艇にも作業のため一定の場所に留まるホバリング能力が求められます。

「おもかじいっぱい」の「いっぱい」は、一般艦なら舵角約30度、舵を利かせるには6ノット(約11km/h)程度の速度が必要ですが、掃海艇での「いっぱい」は舵角約70度、1ノット(約1.8km/h)でも有効です。操舵感覚は、一般艦の場合10m単位のところを掃海艇は0.1m単位と、2けた違う感覚だといわれます。

 この運動性の良さが掃海艇の特徴であり、狭い海域にも入っていけるメリットは災害派遣にも生かされているといいます。

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木造のすがしま型掃海艇「あいしま」(手前)と「みやじま」(2019年12月18日、月刊PANZER編集部撮影)。

 独特の風土を持つ掃海隊ですが、海上自衛隊の任務増加にともない、掃海隊も海上監視など本務ではない任務をこなさなければならない場面も多く、艦艇不足のなかでこれほど個性的な単能(多用途ではない)艦艇が必要なのかという指摘が出てきています。掃海システムの進歩もあり、掃海任務にも新型護衛艦「FFM」を使おうという案もあります。

 2020年度予算案では、あわじ型掃海艦4番艦の建造費(126億円)が要求に盛り込まれていますが、「掃海艦」という艦種が残っていくかは予断を許しません。

 機雷は「あるかもしれない」と思わせるだけでも「風評被害」が発生します。「機雷はありません」と、安心と安全を保障できる掃海部隊が存在するだけでも意味があります。そして令和の時代にも、太平洋戦争の後片づけである“実戦”がまだ続いていることも事実です。

【了】

※一部修正しました(1月31日12時00分)。

【写真】海中に潜む機雷の一種「係維機雷」の一例

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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