QRコード決済 ICカードが普及した鉄道で広がるか? 鍵はSuicaシステムのクラウド化

タッチレス・ゲートレスな自動改札機を目指して

 現在のSuicaはカード本体の情報を、自動改札機を通じて駅のサーバー(コンピューター)で処理し、そのデータをさらに上位のサーバーと同期・集約していく階層的な処理を行っています。しかし、通信技術や情報処理技術の進歩を背景としたクラウド化により、自動改札機でICカードのIDを読み取ることで、直接ネットワーク上のデータを処理することが可能になります。

 JR東日本が2019年度中に導入予定の「新たな新幹線IC乗車サービス」もこの仕組みを利用します。インターネットで乗車券・特急券を予約・購入したときにICカードを登録することで、自動改札機をタッチした際に、ICカードのIDと購入データを照合。ICカードにデータを書き込まずとも、チケットレス乗車が可能になるというわけです。QRコード券の仕組みも基本的にはこれと同様になると予想されます。

 将来的にはSuicaのデータも、カード本体からネットワーク上に移行し、ICカードとQRコードは、券を識別する固有のIDという意味で同じ役割になることでしょう。

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都市部の駅にある自動改札機。利用者が多いため、短時間で膨大な情報を処理している(画像:PAKUTASO)。

 それではICカードは役割を終えてしまうのでしょうか。少なくとも当面はそのようなことはないと考えられます。高速、確実な通信が可能なICカードをわざわざQRコードで置き換える必要はありませんし、毎回スマホのアプリなどを立ち上げてQRコードを表示するよりも、ICカードをタッチする方が手軽なのは変わらないからです。

 おそらく、都市部で繰り返し利用する人向けにICカード、それ以外のローカルエリアやおトクなきっぷなどはQRコードと、併用されると思われます。

 Suica導入から間もなく20年。すっかり定着したように見えた光景も、確実に、一歩ずつ未来へ進もうとしています。

【了】

【画像】QRコードに対応した新型自動改札機

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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コメント

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1件のコメント

  1. なんかこれ新規感強いけど、鉄道におけるQRコードを用いた乗車方法は既に東武東上線のTJライナー専用改札で導入している。こちらは乗車券ではないけど、QRコードを用いてる点としては実績があるのでその延長線上で東武では導入が早そうだし、東武がこの技術を開示すれば他社でも導入が早く進みそう。