戦車が空から降ってくる!水上を走ってくる!空挺戦車M551「シェリダン」の理想と現実

いざ空へ! 唯一実行された空挺作戦の結果は…?

 それでも、「シェリダン」は地雷用の増加装甲を取り付けたり、ミサイルの運用能力を取りはずしたりして、ベトナム戦争を戦い抜きました。最終的にベトナムで破壊された数は、約300両以上だったといわれています。

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1979年に撮影された、東西ドイツ国境の守備に就くM551「シェリダン」(画像:アメリカ国立公文書記録管理局)。

 その最大の能力であった空挺降下を見せることなく、その多くが破壊されてしまった「シェリダン」でしたが、実戦において一度だけ空挺降下を行ったことがあります。

 それは1989(平成元)年、アメリカのパナマ侵攻の時です。1個中隊の「シェリダン」10両がパラシュートで投下され、戦場へと舞い降りました。しかし、着地時に損傷、故障する車両が続出。砲弾の薬莢が割れて、火薬が車内に散らばってしまった車両もあり、降下後に活動できた車両は約半数だったといいます。

 やがて1991(平成3)年の湾岸戦争を最後に、すべての「シェリダン」は予備役となりました。これ以後、アメリカ軍で空挺戦車と軽戦車の制式化はなく、世界的にも実戦で使用された空挺戦車は、M551「シェリダン」が最後の存在となっています。この戦車が、成功だったのか失敗だったのか、その答えはまだ出ていません。

【了】

【写真】ソ連車両を模したM551「シェリダン」

Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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コメント

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5件のコメント

  1. 私はムスカ大佐だ。大同少尉殿、ようやく特殊鋼の結晶の秘密を理解したようだね。しかしそれでは宿題は終わっていない。古事記にも不完全ながら書いてあるだろう。これこそが、全世界を支配する制空権なのだ。まあ仕方がない、臣下の礼をくれぐれも忘れぬように。

  2. なんか内燃機関シンポジウムで某博士がいっていた内容に聞こえてしまうのは私だけか?

  3. ついでにいっておこう。イーロンマスク氏のスペースXの爆発炎上をみてもNASAもどうやらこの結晶の秘密を掴んでないようだ。

  4. あの電気自動車テスラーの人?ロケットはエンジン、電気自動車はモーターなんで関連性がないのになぜ?

  5. ダイヤモンド ケンイチ を経営理念や研究者に結び付けるのもやめたまえ。