東日本大震災 全国から駆け付けた「支援バス」その後 関西のバス いまも東北を走る
現地のボランティア従事者を勇気づけた「災害支援バス」 いまも走る
このとき大阪市交通局から派遣されたバスは、のちに無償で岩手県釜石市へ譲渡され、工事関係者の輸送手段として数年にわたり使われたそうです。
日本バス協会の呼びかけもあり、ほかにも小田急バスや京王電鉄バス、横浜市交通局、名鉄バス、岐阜バス、濃飛バス、名古屋市交通局、近鉄バス、尼崎市交通局(当時)、ジェイアール四国バスなど、全国のバスが東北を走りました。また、バスの無償提供は、19台を岩手県に提供した東京都交通局をはじめ、合計およそ150台にも及んでいます。その多くは、現地バス事業者のカラーに塗り替えられ、2020年現在のいまも健在です。
しかしなかには、元の事業者のカラーそのままで現地を走っているものもあります。たとえば、ミヤコーバスのバス車両は白地に赤色帯の塗装ですが、石巻市では1台だけ、クリーム色の帯に鮮やかなオレンジ色のものが走っています。このバスは譲渡元である神姫バスの塗装をそのまま残しているのです。
兵庫県南部を基盤とする神姫バスは、1995(平成7)年の阪神大震災で被災した経験があり、東北はもちろん、全国で発生する災害支援にとても積極的です。前出の、石巻市内を走る神姫バスカラー車両の車内には、兵庫の子供たちによる応援メッセージの寄せ書きが掲げられ、車両側面には神姫バスからの「支援車両」である旨が書かれています。
東北でボランティアに従事する人々のなかには、関西から来た阪神大震災の経験者も少なくありません。筆者(宮武和多哉:旅行・乗り物ライター)もそのひとりでしたが、石巻を走る神姫バスは、「うわっ、神姫(バス)おるやん !」と指差して叫ぶ人もいるなど、復興に汗を流す人々を勇気づけたのです。
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