「敵に『まさか!』と思わせた航空作戦」3選 零戦の真価 原子炉爆撃 イギリスの意地
「まさかそんな遠くから爆撃機を空中給油機のリレーで飛ばすとはどうかしている…」
1982(昭和57)年3月、イギリスとアルゼンのあいだでフォークランド戦争が勃発します。そのなかでイギリス軍が実施した「ブラックバック作戦」は、いまなお広く語り草になるような内容でした。
イギリス軍は遠く離れたフォークランド諸島を奪還するために、軽空母「ハーミーズ」、「インヴィンシブル」の2隻を中核にした機動部隊を編制して派遣しますが、アルゼンチンに占領された同島のポート・スタンリー空港がジェット戦闘機を運用できる滑走路を持っているために、悩みの種となります。
当時のイギリス軽空母は、艦載機として垂直離着陸機である「シーハリアー」しか使用できず、空戦能力や陸上攻撃能力には不安があったのです。この空港でアルゼンチン軍に、自由に軍用機を運用されると不利になることは確実で、なんとか滑走路を爆撃しようとします。
しかし、大西洋というのは太平洋に比べかなり島が少なく、イギリス軍が使える航空基地は、フォークランド諸島より約6000km離れたアセンション島のワイドアウェーク基地しかありません。加えて、当時イギリス軍が配備していたアブロ バルカン戦略爆撃機では、帰りの燃料を考えないとしても、航続距離が足りませんでした。
ですが、戦争を一度始めたら、あらゆる知恵を絞って勝ちにいくイギリスがこんなことで作戦を断念するはずはなく、国家の威信を賭け、バルカン爆撃機2機(1機は予備)を、計11機のヴィクター空中給油機を使って、現地に送ろうと計画します。
その空路では、バルカン爆撃機に給油するための給油機へ、給油するための給油機へ給油するための給油機に給油機が給油する……といった奇妙な様相が展開されますが、それでもイギリス軍は作戦を成功させます。しかも、1回ではなく数回実行しています。
アルゼンチンがフォークランド諸島の占領を実行した理由のひとつとして、イギリス軍に普通のジェット艦載機を運用できる空母がなくなったことが挙げられますが、アルゼンチン軍も、まさかここまでして爆撃機を飛ばしてくるとは思わなかったのではないでしょうか。冷戦時に対ソビエト連邦や東側諸国へ対抗するために開発されたバルカン爆撃機ですが、この作戦が唯一の実戦となりました。
【了】
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
日本は奇襲なら強いがアドリブには弱くて負けた?
油断してただけじゃないすか?
バルカンって宮崎駿の作品に出てきそうな風防してるよね