病院船は新型コロナ対処の切り札たりえたか 米海軍マーシー級病院船 派遣1か月の結果

大統領自ら見送った「コンフォート」の出港

 今回の「コンフォート」の派遣が決定した2020年3月の時点で、ニューヨークでは新型コロナウイルスの感染が急激に拡大し、現地の医療機関の対応能力が限界に達していました。このためアメリカ国防総省はアメリカ連邦緊急事態管理庁と協議を行ない、「コンフォート」をニューヨーク、「マーシー」をロサンゼルスに派遣することを決定しました。

 これを受け「コンフォート」は、3月28日にニューヨークへ向けてノーフォークを出航、その際、トランプ大統領とエスパー国防長官が見送りに訪れており、大きな期待がかけられていました。

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「コンフォート」の出航を見送りに訪れたノーフォークで演説するトランプ大統領(画像:アメリカ海軍)。

 派遣が決定した時点で「コンフォート」には、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、医療機関での対応が困難になったコロナウイルス感染患者“以外”の傷病者を受け入れて、ニューヨークの医療崩壊を緩和するという任務が課せられていました。

 しかしニューヨークではロックダウンが実行されていたため、受け入れを想定していた交通事故や建設現場での事故、犯罪による負傷者などは激減していました。また「コンフォート」への乗船にあたっては、新型コロナウイルスに感染していないことはもちろん、軍が定めた49項目の医学的条件をクリアしている必要があり、この条件をクリアできず乗船が認められなかった、新型コロナウイルス感染者以外の患者が少なからず存在していたという報道もあります。

 おもにこのふたつの理由から、「コンフォート」は3月30日から4月7日のまでの1週間で、44名の患者しか受け入れることができませんでした。

 このためアメリカ海軍は方針を転換し、4月6日から「コンフォート」への新型コロナウイルス感染患者の受け入れを開始しましたが、乗員やほかの患者への感染を防ぐため、船内の区画を厳密に区切った結果、病床数は集中治療室を含めて600床にまで減少してしまいました。

 こうしたこともあって「コンフォート」の活動終了までの治療者数は、新型コロナウイルス感染患者を含めて182人と、必ずしもかけられていた期待に応えたとはいい難い結果に終わっています。

【写真】「病院船」の名に恥じない充実装備「コンフォート」の集中治療室

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コメント

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2件のコメント

  1. マーシー級って田代まさしかと思ったよ(笑)

  2. そもそも年に1回使うか使わないものに、2隻の病院船で1隻の護衛艦並みの予算と人員を準備する必要があるのか?という話になるのでは。
    当然その分は海自の予算に響くし、任務にも響いてくる。
    左団扇でバンバン税収が増えて、防衛予算が青天井でGDP比を考えなくて、徴兵制か志願兵システムでも人気のある職種なら分からないでもないが、今の税収、国家予算、防衛費、人材の数を考えれば無理があるのでは?