病院船は新型コロナ対処の切り札たりえたか 米海軍マーシー級病院船 派遣1か月の結果
「コンフォート」の活動実績受け日本の病院船保有議論はどうなる?
日本でも新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、医療崩壊を防ぐための手段として病院船を導入すべしとの議論が活発化しており、4月3日付の朝日新聞、5月5日付の日本経済新聞は、政府が病院船の活用調査費を補正予算に計上すると報じています。
前に述べた「コンフォート」の、ハリケーン「カトリーナ」やハイチ地震における活動実績が物語るように、病院船が大規模災害時の医療支援の手段として有効であることは間違いありません。しかし、新型コロナウイルスのような感染症の医療支援では、必ずしも大きな成果をあげられるとは断定できないことも、今回の「コンフォート」の活動実績が物語っていると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
マーシー級は通常、少人数のアメリカ軍軍属(軍人ではない軍所属者)の乗組員とアメリカ海軍の現役医療要員、船の保守要員によって縮小運用を行っており、必要に応じて5日以内に、任務に最適化した医療スタッフと、船の運用に必要な要員を召集して出動する態勢をとっています。
日本が病院船を導入する場合、通常の保守は海上自衛隊が行ない、医療スタッフも防衛省・自衛隊の人員を活用する可能性が高いと考えられますが、現時点でも海上自衛隊の艦艇は乗員を充足できておらず、また医官や看護師資格を持つ隊員も不足しています。この状況下で病院船の運用を海上自衛隊に委託した場合は、ほかの艦艇の運用に支障をきたす恐れもあります。
地震や津波など大規模災害の多い日本において、病院船が有用な存在となり得ることは確かです。しかし、新型コロナウイルスという「いまここにある危機」だけに目を奪われた議論ではなく、自然災害や疫病、有事などあらゆる脅威に対して、少なからぬ費用を投じる価値があるか否かを議論した上で、導入の可否を判断すべきだと筆者は思います。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
マーシー級って田代まさしかと思ったよ(笑)
そもそも年に1回使うか使わないものに、2隻の病院船で1隻の護衛艦並みの予算と人員を準備する必要があるのか?という話になるのでは。
当然その分は海自の予算に響くし、任務にも響いてくる。
左団扇でバンバン税収が増えて、防衛予算が青天井でGDP比を考えなくて、徴兵制か志願兵システムでも人気のある職種なら分からないでもないが、今の税収、国家予算、防衛費、人材の数を考えれば無理があるのでは?