総火演 戦車の交信は何を話しているの? わかりづらい理由と理解深める「聞き取り方」

基礎知識をふまえて2019年の「総火演」での事例を解説

 実際になにを話しているのか。それを理解するには、少しだけ自衛隊の組織に関する知識が必要です。それは、部隊の単位です。

 戦車部隊の場合、4両1チームを「小隊」と呼び、これが部隊単位の基本となります。チームの最小単位は2両1組の「班」で、つまりひとつの小隊にはふたつの班があり、これらを「1班」「2班」と呼称します。4両の戦車を指揮する小隊長は1班の車両に乗っているため、「小隊長兼1班長」ということになります。

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戦車や装甲車の乗員が着用する「装甲車帽」。このヘルメットに取り付けられた通信器を介して車内通話や無線交信を行う(2015年11月、武若雅哉撮影)。

 以上をふまえたうえで、昨年行われた「令和元年度富士総合火力演習」の「前段演習」における、10式戦車の無線交信を例に、その内容を解説していきます。

 会場には、最初に小隊長が乗る「1班」2両の10式戦車が登場しました。「2班」の前進を掩護するための射撃を行いますが、ここでは「3、4の台、装甲車、1班、対りゅう、撃て」と言っています。これは、会場に設置された標的の設置場所であるところの「3と4の台」にいる敵の「装甲車」を、「1班」が「対戦車りゅう弾」で「射撃をする」という意味になります。

 基本的な射撃号令のルールとしては、まず「目標の場所」、次に「目標物」、そして「誰が」「何(砲弾の種類)を撃つのか」、最後に「撃て」と射撃の指示をします。

 続いて、「1班」の掩護下に進入してきた「2班」に対し、2班長が「5の台、戦車、徹甲、2班集中、左へ、撃て」と指示を出しています。先ほどと同様のルールに則って発していますが、「左へ」という指示が追加されています。これは、敵の照準や射撃を回避するために、左に曲がりながら撃つという高度な技を出すための号令であり、それが「左へ」「右へ」だけで表現できてしまうのです。

 2発目以降も撃つ目標が同じだった場合、さらに号令は省略され「同一目標、右へ、撃て」などとなります。

【写真】「総火演」恒例 偵察バイク部隊とアヒル様の儀式

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