総火演 戦車の交信は何を話しているの? わかりづらい理由と理解深める「聞き取り方」

陸上自衛隊の「総火演」では、会場アナウンスと共に無線交信の音声も流れますが、特に戦車の交信は正直、何を話しているのかよくわからないことも。この交信のルールを理解していると、「総火演」の観方が少し変わるかもしれません。

射撃以外にも号令いろいろ 「まて」と「やめ」の違いは?

 ちなみに、今年が「総火演」最後の参加と見られる74式戦車の場合、丘の手前に姿を隠し、前進したあとに目標をロックオンして射撃する姿が観られるでしょう。その際は、「5の台左、戦車、対りゅう、小隊集中、撃て、前へ」といった号令が聞かれるものと思われます。

 これは「5の台の左側にいる敵戦車に対して、対戦車りゅう弾を小隊の4両で同じ目標に集中して撃て、目標が見える位置まで前へ」という意味になります。この場合、戦車は号令の後にすぐ射撃する訳ではなく、前進し目標が見えてから射撃をするので、若干のタイムラグが生じます。

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緑旗を掲げ、射撃を「しない」表示をする10式戦車。この状態では弾は装填されていない(2018年8月、武若雅哉撮影)。

 つねに声を張っているため、射撃号令かと思ってしまう無線交信もあります。それが「前方障害、小隊(または1班)止まれ」です。これは、「戦車が前進していった先に対戦車地雷などの障害が発見されたため、危険だからこれ以上は進むな」を意味します。

 そのほかに注目すべき号令は、戦車が射撃し終わったあとに言われる「撃ち方、まて」と「撃ち方、やめ」です。同じような意味に思えるかもしれませんが、実は意味が大きく異なります。

「まて」は、すぐに射撃することなく、一旦「待つ」ことを指します。つまり、まだ射撃を行う可能性があるということで、射撃を担当する砲手はいつでも次の弾が撃てるように準備しています。

「やめ」は、もう射撃をしないという意味が込められていて、この号令を聞いた砲手は次の弾を装填しません。この「やめ」の号令が掛かると、射撃する準備ができている状態を表す「赤旗」から、射撃しない状態を表す「緑旗」へと変更されるので、見た目にも判別できるようになっています。

 このように、早口で省略された無線交信を聞き取れるようになると、「総火演」や戦車に対する理解もより深まることでしょう。ライブ配信を観る際には、この無線に耳を傾けてみるのも面白いと、筆者(矢作真弓/武若雅哉:軍事フォトライター)は思います。

【了】

【写真】「総火演」恒例 偵察バイク部隊とアヒル様の儀式

Writer:

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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