戦車の「オス」と「メス」の見分け方教えます なかには「雌雄同体」の戦車も

「雌雄同体」戦車も登場

 イギリスが第1次世界大戦に投入した戦車は、その形状から「菱形(ひしがた)戦車」と呼ばれ、Mk.Iから最終型のMk.Vまで5種類ありました。そして、そのすべてのタイプで雄と雌の両方が、おおむね2対3の割合で製作されます。

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ボービントン戦車博物館でデモ走行するMk.IV戦車の雄型。青丸が大砲で、赤丸が機関銃。雌型は大砲部分も機関銃だった(柘植優介撮影)。

 しかしそれ以降の戦車に、雌雄の別があるものは見られません。それは、フランスで全周旋回砲塔を搭載した戦車が開発されたからです。360度回る砲塔は、菱形戦車のようなスポンソンよりも、より広い範囲への射撃を可能にし、死角も激減しました。武装も左右別々に用意する必要がありません。この砲塔を載せるスタイルが、その後の戦車の世界標準になります。
 さらに第1次世界大戦の戦訓から、大砲は小型化され、発射速度の速いものが用いられるようになりました。このため、砲と機関銃を様々な組み合わせ方で積めるようにもなりました。

 これらの理由から、戦車を武装で2タイプ用意する必要はなくなります。戦車に「雄」と「雌」の区別があったのは、まさに黎明期の試行錯誤ゆえといえるでしょう。

 ちなみに試行錯誤のなかでは、片側が雄で、もう一方が雌という「雌雄同体」も作られています。生まれた経緯は1918年4月下旬に起きた、史上初の戦車戦の戦訓からです。イギリス戦車とドイツ戦車が偶然、出くわしたことで発生したこの戦車戦において、機関銃しか装備していなかったイギリスの菱形戦車「雌」型は、ドイツ戦車を撃破できませんでした。

 こうして作られた「雌雄」型ですが、敵戦車を撃破できるのは片面のみのため、使い勝手は推して知るべしです。これもまた黎明期ゆえといえるでしょう。

【了】

【写真】フランスが開発した画期的戦車 FT-17

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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