近現代戦で最前線に出た指揮官たち 佐官や将軍までがなぜ? もしかしたら国王も…?

ケース3 国王でありながら部隊指揮もできるアブドゥッラー2世

 第2次世界大戦中、イギリスの首相になったウィンストン・チャーチルが、海軍大臣を務めた第1次世界大戦を回想して「アレクサンダーやシーザーやナポレオンが、兵士たちと危険を分かち合いながら、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことはもうなくなった」と話したといわれています。

 これら君主が自ら部隊を率いるとこを「親征」といいます。先述の赤い大佐も、のちに一大軍事勢力の総帥となってなお戦場に出ていましたが、このような事態は2020年の現在では普通ありえません。しかし世界でただひとり、その可能性がなくはない人物がいます。現ヨルダン国王のアブドゥッラー2世です。

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ヨルダンで「アル・フセイン」戦車と改名したイギリス製のチャレンジャー1戦車。アブドゥッラー2世国王は戦車部隊の指揮を執れる(画像:アメリカ海兵隊)。

 アブドゥッラー2世国王は、イギリス軍仕込みの戦闘技術を体得しており、ヨルダン軍の特殊部隊に所属した軍歴があり、チャレンジャー1戦車の操縦や部隊指揮までできます。実際に国王になった後も、訓練などには自ら参加することもあり、ニュース映像などで近接戦闘訓練に国王が参加している様子を確認することができます。

 そして、のちに否定されますが、2015(平成27)年には、イスラム国との戦いで国王自ら戦闘機を操縦し、空爆に参加するという報道もありました。否定こそされましたが、本国では国民の生の声を聞こうと、度々変装して街に現れ、写真や動画なども撮られたことがある国王なので、もしかしたらという気持ちにさせられてしまいます。

 時代が進むと共に人員の動員も増え、兵器も進化していく戦場において、指揮官は前線に出ないことが多くなっていますが、このように多少の事例はあります。案外、某ロボットアニメや某スペースオペラ作品の描写も、現実にないというわけではないようです。

【了】

【写真】ドイツの元祖「赤い人」と戦闘機

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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