近現代戦で最前線に出た指揮官たち 佐官や将軍までがなぜ? もしかしたら国王も…?
「指揮官率先」ゆえに将校の戦死率も高く…
実はこの「指揮官率先」の伝統は、当時のアメリカ陸軍航空軍(アメリカ空軍の前身)やイギリス空軍にもあり、敵味方両陣営ともに、将校が空戦をすることも珍しくありませんでした。
そのため、当然ですが将校の戦死率も跳ね上がります。日本陸軍では前記した加藤中佐をはじめ多くの将校が空で戦死しています。またアメリカ側も、ニール・カービィ大佐など、エースで航空隊指揮官だった将校が戦死しています。
ちなみにイギリス陸軍では1982(昭和57)年、フォークランド戦争中のグースグリーンの戦いにおいて、ハーバート・ジョーンズ陸軍中佐が陣頭に立って突撃し、自らを犠牲にすることで狙撃陣地の撃破に成功しています。戦後にもイギリス軍には「指揮官率先」の考え方が残っているようです。
ケース2 前線の情勢を将官が知るべきというドイツ軍人の戦い方
両大戦におけるドイツ陸軍では、その前身であるプロイセン軍の参謀本部が、前線部隊との意思疎通を重視した伝統が残っており、佐官だけではなく、少将や中将など、師団長、軍団長クラスの将官が、最前線を視察して指揮を執ることが多くありました。
なかでも広くその名を知られるのはロンメル元帥でしょう。ロンメルは北アフリカ戦線でハーフトラックに乗り、何度も前線に姿を現したそうで、当時、敵として戦っていたイギリス軍人にも、前線で目撃した人がいるほどです。
ほかには「パンツァーマイヤー」のあだ名で知られたクルト・マイヤー少将などがいます。大尉時代だけではなく、昇進して佐官になってからも、クルトは度々、自身で部隊を率いて最前線で戦い、危機的な状況を生き抜いています。こうした参謀や将軍が前線に出ることを「率先垂範(そっせんすいはん)」と日本では言いますが、現在ではビジネス用語としても使われているようですね。
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