ソ連/ロシアの軍事パレードに見る「指導者の乗りもの」と現代にいたる自動車事情

ロシアの自動車事情 普段づかいは外車でも国家行事は国産車を!

 近代軍に馬が存在する余地が無くなったことを象徴するように、この対独戦勝記念パレードにおいても騎乗閲兵はすぐに行われなくなり、高官はオープンカーに乗るようになります。ジューコフ元帥のように、騎乗できる高官が居なくなったのも要因かもしれません。しかし観閲官と観閲部隊指揮官が別々にオープンカーを2台並べて、整列した部隊のあいだを巡閲する手順は、騎乗時代を踏襲しており栄光を残しています。

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2018年自衛隊中央観閲式で「クラウン」で巡閲する安倍総理大臣。(2018年10月14日月刊PANZER編集部撮影)。

 オープンカーには当然、国を代表する高級車が使われます。ちなみに日本の自衛隊観閲式では、総理大臣は「クラウン」を使います。ではソ連/ロシアを代表する高級車とは何でしょうか。そう考えると、ソ連/ロシアの戦車や戦闘機は有名ですが、自動車は無名という、同国の悩ましい事情が見えてきます。

 社会主義の旧ソ連時代から、ロシアに自動車産業はありましたが、苛烈な国際競争にさらされる自動車市場に対応できる製品力は不足していました。ソ連が崩壊して市場が開放されると、国内はあっというまに、外国車に席巻されてしまいます。パトカーなど公用車にも外国車が多く使われました。

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2017年「ZIL-410441」で巡閲する陸軍総司令官サリューコフ元帥(画像:ロシア大統領府)。

 ロシアにも高級車や大型車を製造するメーカー「ZIL」(リハチョフ記念工場、の意)があったのですが、2012(平成24)年に自動車生産を中止、工場も解体されてしまいます。プーチン大統領さえ、普段づかいの専用車にはロシア製ZILではなく、ドイツ製メルセデスベンツ W221「プルマン」の特装車を使っていました。

 しかし国威をかけたパレードに輸入外国車を使うわけにはいきません。製造中止となって久しいZILのオープンカーは、2017年まで頑張ります。

【写真】プーチン大統領専用のロシア国産リムジン

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