ドイツ生まれの客船を転用 旧海軍空母「神鷹」 日本がてこずった同盟国の先進技術とは

太平洋戦争前、ドイツと日本は長距離航路で結ばれていました。そこに投入されたドイツ客船が、戦争勃発によって日本に留め置かれたことで誕生した空母があります。数奇な運命をたどった外国生まれの日本空母について見てみます。

かくして改装空母「神鷹」は誕生したが…

 しかし、これで「神鷹」の工事は終わりませんでした。原型の「シャルンホルスト」が積んでいた機関は、ドイツ最新のワグナー式高圧ボイラーで、日本の船舶では搭載例がない未知のものでした。

 そのため、試運転時からトラブルが続出し、実用に耐えないとして再改装が決定、呉海軍工廠に戻り、使い慣れた日本製ボイラーへの載せ替えが実施されました。ボイラー機関は船体のいちばん奥に設置されているため、飛行甲板や格納庫甲板を切り開き、結局3か月近い工期が費やされました。

 機関の換装工事が1944(昭和19)年2月に終わると、各種訓練と艦載機を搭載したのち、7月から実戦運用が始まります。しかし機関の換装と、艦が転覆しにくくなるよう復元性を維持する目的で船底の左右にバルジ(船体のふくらみ)を設けたことで、出力低下と水中抵抗の増大を招き、最高速力が21ノット強に低下してしまします。その結果、空母機動部隊での運用は無理と判断され、「神鷹」は東シナ海や南シナ海などでの輸送船団の護衛に回されました。

 何度か船団護衛の任務に就きましたが、実運用からわずか4か月後の11月17日深夜、アメリカ軍潜水艦の魚雷攻撃を受けて「神鷹」は沈没します。客船「シャルンホルスト」から空母「神鷹」への改装工事が通算1年半近くもかかったことからすると、あまりにも短い艦歴でした。

 日本は、航空機用の水冷エンジンや機関砲についても、ドイツのものを完全コピーできずに手こずった経緯があります。その点では客船「シャルンホルスト」の高圧ボイラーについても同様だったといえるでしょう。

【了】

【写真】「シャルンホルスト」の改装に参考とされた「大鷹」

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子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

1件のコメント

  1. ドイツの高圧ボイラーは本国でも稼働率の低いものなのでこの見解はどうでしょう?

    軍艦では高温高圧のボイラーを避けるもので、実際軍艦のボイラーは同時期の商船と比べれば低いのが普通です。

    高温高圧のボイラーは熱力学サイクルから見れば魅力的ですが、現実には稼働率や整備性の悪化、被弾時の危険性増大などがあるためです。

    神鷹のボイラーについて考えるとするなら、「予定通りに整備を受けられる前提の民間船の機関を軍で扱えるか?」という観点で考えるのが正解でしょう。よく「フレッチャー級は島風より高温高圧のボイラーを使っている」という人がいますが、船として必要な性能が出るならむしろ低温低圧で済ませるべきです。米軍でも扱いあぐねたのかフレッチャー級の次級では運転条件を少し下げていますね。つまるところ高温高圧のボイラーは「自国なら高温高圧でも扱える」という技術的自信の表れです。ですが、その自信が裏付けのないものだった場合にどうなるのかを大戦時のドイツ艦から学ぶべきではないでしょうか。

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