目的はプロパガンダ! スターリンが作らせた巨人機「マクシム・ゴーリキー号」とは?

第2次世界大戦前夜、ソ連でエンジン8発の超巨大飛行機が造られました。わずか2機のみの製造でしたが、同国にとっては重要な役割を担っていたといいます。誕生の経緯と顛末について見ていきます。

「映え狙い」が招いた悲劇すら宣伝に

 1935(昭和10)年5月18日、「マクシム・ゴーリキー号」モスクワで、機体を造った工場の従業員とその家族38名を乗せて離陸しました。ところが、随伴飛行していたポリカルポフI-5戦闘機が曲技飛行を始め、宙返りしたところでコントロールを失い「マクシム・ゴーリキー号」の右翼に突っ込みます。これにより「マクシム・ゴーリキー号」はモスクワ北西部のソコルに墜落し、乗組員およびI-5パイロットと乗客合わせて49人が亡くなりました。

 事故を調査したNKVD(内務人民委員部)は、事故の1時間前、記録映画撮影者が“映える”映像を撮るためにI-5のパイロットへ飛行機の近くで曲技飛行するよう勝手に依頼していたと報告していますが、党幹部の指示だったといううわさもあり真相ははっきりしません。

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1934年11月の革命記念日に赤の広場上空を飛行するANT-20。両側にI-5戦闘機を随伴させ、その巨大さを際立たせている。

 ソ連政府は大々的な追悼集会を開催し、後に最高指導者となるニキータ・フルシチョフ(当時モスクワ党第一書記)も参列しています。「お察し」の通り宣伝効果は絶大でした。この集会後マクシム・ゴーリキー号建造委員会には、2か月でANT-20が16機建造できる6800万ルーブル(2020年現在の日本円換算で約170億円)に上る寄付金が集まります。

 1938年にエンジンを強化した改良型ANT-20bisが建造されますが、すでにプロパガンダに巨人機を飛ばす時代ではなくなっており、同機は国内線の旅客輸送に使われます。

 それなりに飛行実績を重ねるものの、1942(昭和17)年12月14日、飛行中に乗客を操縦席に座らせ、操縦機器を誤操作させたのが原因で、中央アジアのウズベキスタンで墜落してしまいました。これにより26人の乗客と10人の乗組員全員が亡くなります。しかし時代は第2次世界大戦のただ中であり、プロパガンダどころかほとんど知られることはありませんでした。

【了】

※誤字を修正しました(8月19日6時40分)

【写真】「ジャンボジェット」よりも全幅が大きい「マクシム・ゴーリキー号」の全容

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

4件のコメント

  1. 記事内に「…出力不足で同体上部にも櫛形配置のエンジン2基を増設する」との記述があり、「同体」は「胴体」の変換ミスと推測されますが、「櫛形」は「串形」の間違いだと断言する自信が少しなくなりました。

    「櫛」の字はあり得るのでしょうか?

    • ご指摘ありがとうございます。記事を修正いたしました。

  2. 乗客に操縦桿を触らせて墜落したといえば20年ほど前にもパイロットが息子に操作させたために飛行機が墜ちてしまった事件がロシアでありましたね。

  3. 室内の面積100平方メートルって鉄道車両2両分に近くありませんか?

    (参考:2.6メートル × 19.3メートル = 50.18平方メートル)

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