コミュニティバス=「走る町内会」? 全国ブームの先駆者「ムーバス」が見せた光景

全国で路線バスの廃止・休止が増えていく中で、「コミュニティバス」という存在が徐々に増えていますが、実は、その定義はあいまいです。通称「コミバス」の元祖とも言われている東京都武蔵野市「ムーバス」の例を挙げながら見てみましょう。

八方塞がりだった「ムーバス」誕生までの経緯

 こうして誕生した「ムーバス」ですが、当時はこのようなバス路線の前例がなく、構想から運行開始まで4年もの歳月を費やしたそうです。「認可が降りない」「車両がない」「採算がとれない」「事業者がいない」という八方塞がりの状態を乗り越えて、日の目を見ています。

 いまの「ムーバス」のコンセプトは、武蔵野市民の要望をもとに1991(平成3)年から検討が始まりました。しかし、路線バスの認可にかかわる警察や運輸省(現・国土交通省)とも、当時は難色を示しました。

 まず警察の主張は、安全の観点から「幅8m以下の道路にバス路線の開設を認めない」というものでした。幅6mの区画道路が多い吉祥寺には、それに見合った車幅2m、長さ7mほどのコンパクトな車両(一般的な大型バスは車幅2.5m、長さ10~11m程度)が必要だったのです。

 また小型の路線バス車両といえば、いまでこそ車種の選択肢がありますが、当時は送迎車としての使用が前提のマイクロバスしかなく、乗客の入口および出口となる2枚扉を備えた路線バス車両はなかったそうです。

 最終的にはメーカー(日野自動車)が「これからの時代はこのような需要がある」との予測に基づき、後の「リエッセ」につながる新しい車種の開発に反映させることで解決しましたが、それ以外にも車両側面のリアタイヤを照らす路肩灯の出っ張りを減らすといった省スペース化や、片側一方通行のルート設定により、何とか認可を取り付けるまでに至ったのです。

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吉祥寺駅北口側は自転車の通行も多い(2016年8月、宮武和多哉撮影)。

 しかし、もうひとつの問題となったのが「採算」です。バス事業者の見方は「大通りで50人乗りの大型バスを200円(当時)で運行しても乗客が少ないのに、28人乗りの小型バスを100円で運行しても採算が取れない」というもので、当時の運輸省も「安定経営の目処が立たないと認可しない」立場を取っていました。

 車両を市で保有することでコストのハードルを下げたものの、当初公募に応じたのは関東バス1社のみ。それも交渉の末、「2000万円までの赤字は補助する」という条件でようやく事業者として決定しました。

 こうして1995(平成)年11月、朝8時から夕方6時まで、1時間4本運行する「ムーバス」が開業しました。なお、運行事業者には後に小田急バスも加わっています。

【地図】住宅街にくまなく7路線 「ムーバス」のルート

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