コミュニティバス=「走る町内会」? 全国ブームの先駆者「ムーバス」が見せた光景
縮小市場の中での「コミバス」これからの課題
あっという間に当たり前の存在となったコミュニティバスですが、地方で導入しているケースの多くでは、なかなか採算が取れていないのが現状です。そもそも全国の主要都市は武蔵野市ほどの人口密度や環境がなく、地域によっては最初から採算を度外視して「いくらなら乗ってもらえるのか」と運賃を先に決めるケースもあるほど。2020年現在では、「ムーバス」ですら単年赤字を計上するほどで、その事業性が不安要素でもあります。
またコミュニティバスは、業務委託などで最初から人件費のコストを抑える傾向にあります。実際に「ムーバス」も、55歳以上の運転手を再雇用し、人件費を抑えることで黒字転換に成功していますが、大型免許を持つ運転手の不足や、働き方の見直しも進むなかで、「待遇を抑える」前提がどこまで続けられるか、という課題も残ります。
「ムーバス」運行開始までに多くの障害があったように、路線バスは「必要になった時にすぐに運行できる」ものではありません。「ここからここへ歩かずとも移動できる」サービスの維持は、老いの訪れを避けられない多くの人々に関わってくることでしょう。路線バスの苦境の打開から始まる「コミュニティバス」が、どのように無理なく続くかたちを確保していくのか、もっと話し合われてもよいのではないでしょうか。
【了】
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
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