「それどこ?」な高速バスの行先 製鉄所 地元のイオン 中心街に行かない名古屋線
なぜ? 中途半端な行先「古戦場駅行き」
豊鉄バスの新城~名古屋線は、名古屋ICを降り藤が丘駅(名古屋市名東区)に停車したあと、繁華街である栄や名駅(名古屋駅)に背を向け、終点の長久手古戦場駅(長久手市)へ向かいます。
都心まで乗り入れないのは、所要時間が延びると1台で1日に3往復するダイヤを組めないことが理由です。藤が丘駅は、名古屋ICに近いうえ、栄と名駅に地下鉄1本で行けるので、所要時間と利便性のバランスという点で最適です。
さらに長久手古戦場駅の周辺には、愛知学院大学や名古屋外国語大学といった大学が集中しています。新城市からは鉄道だと乗り換えが必要ですが、高速バスのおかげで簡単に通学できるようになりました。同市の高校生にとっては、実家から通える大学が増え、進路の選択肢も広がったことでしょう。愛知医科大学病院も両駅から近く、定期的な通院者の利用もあります。
また新城市民の生活に必要な路線として、高速バスとしては珍しく同市が運行経費の一部を補助しています。今後は、紅葉で有名な鳳来寺山など新城市への観光客誘致に貢献することも期待されます。
蛇足ですが、新城市は、織田・徳川連合軍が武田軍と戦った「長篠・設楽原(したらがはら)の戦い」が行われた地で、設楽原古戦場が人気の観光地になっています。なお、その戦いの9年後に羽柴(豊臣)軍と徳川軍が戦った「小牧・長久手の戦い」の舞台のひとつが、終点の長久手古戦場です。
このように高速バスの終点や停留所はバラエティに富んでいます。もう1例を挙げると、「福島競馬場前」(福島市)は、、競馬ファンのために路線をわざわざ伸ばしたように見えますが、実は福島交通の営業所(車庫)の目の前、というようなケースもあります。
高速バスの終点の先には、その土地ならではの風景が広がっています。
【了】
※一部修正しました(9月13日11時20分)。
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。
すみませんが、間違えています。
事業所が終点となっている例として、他に「君津製鐵所」(千葉県君津市、日本製鉄東日本製鉄所君津地区の正門前)
「君津製鐵所」は日本製鉄に社名変更したときに、常用漢字の鉄の「君津製鉄所」にバス停名も変わりました。
バスが行くところは、正門ではなく東門です。
正門は管理センターが東門に移転した際に、中央門に名前が変わってます。
ご指摘ありがとうございます。
記事を修正いたしました。