戦車が装備した信号機 何のため? 旧軍の九七式中戦車に見る3色灯のナルホドな実用性

砲塔上に載せられた信号機

 九七式中戦車を捉えた写真のいくつかには、砲塔上面の展望塔左側に棒状の器具が見えるものがあります。これこそ無線機とは別に装備された取り外し式の通信装置でした。

 器具は鋼管を切削したケースの内側に、上から緑・橙(黄)・赤色の色付きのガラス管が電球と共に入っており、取り付け部分には緩衝バネが入っていました。そして車内右上の操作板のスイッチで発光・点滅するため、点灯を制御することでモールス信号も打て、おもに夜間の部隊内の指揮・連絡に用いられたのです。

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旧満州(現在の中国東北部)にあった四平陸軍戦車学校で、主砲を外して訓練中の九七式中戦車。戦車長が身を乗り出す展望塔横には、砲塔用信号灯(円内)が装着されている(吉川和篤所蔵)。

 なぜ無線機があるのに、このような発光式の通信装置を装備したのでしょう。それは無線機を搭載していても、隠密行動する際には電源を切っているので、先の手旗信号と違い視認できる通信装置が必要だったからです。また当時の九六式四号戊無線機は通信距離が1km程度しかなく、夜間なら発光信号であっても、条件さえ良ければかなり離れた位置からでも視認できました。

 この3色に切り替わる発光方式は、道路にある一般的な信号機を思わせることから、「信号灯」と呼ばれたそうです。なお前出のように脱着可能なため、普段は専用箱に入って車内に収納されました。

【写真】レストア車体で完全復元 九七式中戦車の信号灯をカラーで見る

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コメント

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2件のコメント

  1. 1930年代の道路の信号機は二色だったかもしれない。 
    安全第一の教育で育ってきた者にとって、敵弾飛び交うなか折角装甲に優れた戦車から半身を乗り出して通信するなどは無謀に思える。 
    そして、信号灯は傍受されなかったのだろうか。

  2. 嘘つけ。戦車間の連携に熱心だった日本陸軍戦車は全車無線機を搭載し、専用の無線手を車体前方左に配置してます。車内通話はドイツと同じく喉元マイクを使用してます。騒音が激しい車内での肉声は聞き取れないから。前方機銃の操作はあくまで補助業務。この程度の事はちょっと調べればわかる事。性能で遥かに劣る97式新砲塔が多数のM4を討ち取ったのはこの高い連携能力による。