戦車が装備した信号機 何のため? 旧軍の九七式中戦車に見る3色灯のナルホドな実用性

戦車のお尻にも付いた信号機

 車体後部中央には、さらに見た目が道路用信号機に似た「後部用信号灯」が設置されていました。こちらは取り外しできない常設の装備で、小さな3色のガラス円が横一列に並んだ形状をしていたものの、色の配列は三菱重工製と日立製作所製が橙・緑・赤の並びで、相模造兵廠製が緑・橙・赤の順とメーカーによる違いがありました。

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砲塔回りにハチマキ式アンテナを装備した独立戦車第十四中隊所属の九七式中戦車。砲塔上部にある展望塔の脇(赤い矢印)には、棒状の信号灯が見える(吉川和篤作画)。

 現代の戦車にも通じる、意外に先進的な装備の信号灯ですが、砲塔用を使用した場面を映した写真は少なく、主に戦車学校の訓練やパレードでの装着例が見られる程度です。しかし太平洋戦争後半に起きたサイパン島の戦いでは、撃破された何両かの九七式中戦車に砲塔用の信号灯が取り付けられているのが確認できます。このことから、同島の夜間戦闘などで無線封鎖時の組織的な運用が推測されます。

 夜間に有効だと認識されていたからなのか、砲塔用の信号灯は太平洋戦争中に旧日本海軍が開発した水陸両用戦車の「特二式内火艇」にも搭載されています。同戦車は、夜間の上陸作戦なども行っているため、もしかしたらその際に使用されたかもしれません。

【了】

【写真】レストア車体で完全復元 九七式中戦車の信号灯をカラーで見る

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「あなたの知らないイタリア軍」「日本の英国戦車写真集」など。

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コメント

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2件のコメント

  1. 1930年代の道路の信号機は二色だったかもしれない。 
    安全第一の教育で育ってきた者にとって、敵弾飛び交うなか折角装甲に優れた戦車から半身を乗り出して通信するなどは無謀に思える。 
    そして、信号灯は傍受されなかったのだろうか。

  2. 嘘つけ。戦車間の連携に熱心だった日本陸軍戦車は全車無線機を搭載し、専用の無線手を車体前方左に配置してます。車内通話はドイツと同じく喉元マイクを使用してます。騒音が激しい車内での肉声は聞き取れないから。前方機銃の操作はあくまで補助業務。この程度の事はちょっと調べればわかる事。性能で遥かに劣る97式新砲塔が多数のM4を討ち取ったのはこの高い連携能力による。