エアバスのヘリとコンビーフ どう関係? 日本の欧州製ヘリ市場を開拓した野崎産業とは

ヨーロッパ製ヘリ市場を開拓するも…

 野崎産業は「アルエットII」の拡大発展型である「アルエットIII」も輸入しました。東京消防庁が初代「かもめ」として導入した「アルエットIII」は、東京都新宿区にある消防博物館の屋上に、2021年現在も展示されています。

 高高度での飛行性能が高い「アルエットIII」は、消防や警察、山岳救助を行なう民間の運航会社から高く評価され、野崎産業が輸入したシュド・アビアシオン製のヘリコプターは、日本でシェアを拡大していきました。

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フランス海軍の「アルエットIII」。同海軍は2021年2月現在も救難ヘリコプターとして運用している(画像:エアバス・ヘリコプターズ)。

 シュド・アビアシオンは1970(昭和45)年に、フランスの航空機メーカーであるノール・アビアシオン、およびフランスの弾道ミサイル開発研究協会(SERBE)と合併してアエロスパシアルとなり、1992(平成4)年には同社とドイツの航空機メーカーMBB(メッサー・シュミット・ベルコウ・ブローム)のヘリコプター部門が統合されてユーロコプターが誕生します。野崎産業は、アエロスパシアルとユーロコプターの代理店としてヘリコプターの輸入を続け、日本におけるヨーロッパ製ヘリコプターの普及に貢献していきました。

 また、野崎産業は一時期、アメリカの航空機メーカーであるセスナの代理店も務めており、航空機を扱う商社として大きな存在感を示していました。

 その後、野崎産業は1999(平成11)年にJFE商事の前身である川鉄商事と合併し、合併後の川鉄商事もユーロコプターの代理店を務めます。2001(平成13)年には同社と、アエロスパシアルから一部の機種の代理権を獲得していたソニー、およびユーロコプターと共同で、ユーロコプター製ヘリコプターの輸入代理店を集約したユーロヘリ株式会社を設立しますが、2004(平成16)年に航空機事業を伊藤忠商事に売却し、川鉄商事は航空機の輸入事業から撤退しました。

 川鉄商事はヨーロッパ製ヘリコプターという野崎産業の遺産は手放しましたが、もうひとつの遺産であるコンビーフは手放さず、グループ再編ののち現在もJFE商事の子会社である川商フーズによって、「ノザキのコンビーフ」は我々の食卓に届けられているというわけです。

【了】

【写真】戦後日本における最初期のヘリ「きたかみ」号

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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