6Gの電波は成層圏から? 「飛ぶ基地局」実現へ通信各社が注目の乗りものとは【Merkmal】

NTTドコモやソフトバンク、ノキアといった通信大手が、高高度滞空型無人航空機への関心を高めている。通信衛星の軌道よりも低い成層圏に、長期間滞空できるというその特徴から、通信衛星の代替としての役割が期待されているものだ。

軍事目的で生まれ「疑似衛星」として注目

 通信各社が、ある「空の乗りもの」に注目している。2021年2月1日、エアバスの防衛航空宇宙部門エアバス・ディフェンス・アンド・スペース(以下エアバスD&S)とNTTドコモ、フィンランドの通信大手企業のノキアの3社が、エアバスD&Sの高高度滞空型無人航空機「ゼファー」の、5G/6G携帯電話通信に活用するための技術研究を共同で行っていくことに合意した。

 高高度滞空型無人航空機(HALE:High Attitude Long Endurance)とは、高度1万m以上を飛行し、24時間以上滞空できる無人航空機のことを指す。高高度滞空型無人航空機の代表格で、自衛隊も導入するノースロップ・グラマンの「グローバルホーク」は、旅客機などに使用されているターボファン・エンジンを動力としているが、ゼファーは細長い主翼一面に敷き詰められた、太陽熱によって発電されるリチウムイオン電池と充電式バッテリーでプロペラを駆動して飛行する。

 ジェット機であるグローバルホークが1t以上(1360kg)の監視装置などを搭載できるのに対し、ゼファーは5kgまでしか機器を搭載できないが、連続滞空時間はグローバルホーク(36時間)を大幅に上回る26日間に達しており、バッテリーを併用すれば数か月間の滞空が可能とされている。通信各社は、この滞空性能に注目しているのだ。

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NTTドコモとノキア、エアバスD&Sが5G/6G通信への活用の共同研究を行うHAPS「ゼファー」(画像:エアバス・ディフェンス・アンド・スペース)。

 ゼファーはイギリスに本社を置く防衛技術研究開発のQinetiQが2003(平成15)年に開発した無人航空機で、用途は偵察衛星を補完する偵察と、軍事通信の中継を想定していたが、買い手がつかなかったことからエアバスD&Sに売却された。

 エアバスD&Sは軍事目的だけでなく、通信衛星や観測衛星を補完する高高度擬似衛星(HAPS:High Attitude Pseudo Satellite)としてのゼファーの活用を民間に提案しており、今回のNTTドコモ、ノキアとの共同研究の合意は、その提案が実を結んだものと言える。

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