戦闘機に「栄光」ヘリに「はつかり」 実は存在する自衛隊機の日本語愛称 浸透しなかったワケ

任務や性格を表わそうと知恵絞るも定着せず

 命名基準や対象機種に不明な点が多いものの、親しみやすい「鳥」に由来するものが多い傾向が見て取れます。一方で、スピードと火力を誇る戦闘機には「光」、おとなしいプロペラ練習機には「風」、対潜哨戒機には空から獲物に襲い掛かる「わし」「たか」などの猛禽類と、任務や機体の性格がイメージできるものもあります。

 変わったところでは、航空自衛隊で初めて夜間要撃が可能となったレーダー装備のF-86D全天候戦闘機には「月光」という愛称が。これは、旧日本海軍の夜間戦闘機「月光」にちなんだのかもしれません。

 しかしこの試みも、残念ながら浸透することはありませんでした。愛称発表のニュースは新聞には載らず、航空雑誌のニュース記事で紹介されたくらい。その後も『自衛隊装備年鑑』に記載される程度で、国民に馴染むことなく自然消滅していきました。

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自衛隊で独自に「天馬(左奥)」「ほうおう(右手前)」という愛称を付けていたC-46輸送機とH-21ヘリコプター(リタイ屋の梅撮影)。

 ところが、60年ほど前に誕生し、ほとんど浸透しなかった愛称が、いまだ生き残っている界隈があります。それはプラモデルの世界です。1980年代頃まで、国内メーカーの自衛隊機製品のパッケージや説明書には「栄光」「旭光」「若鷹」「しらさぎ」などの愛称が残されていました。

 2021年現在においても海外メーカーが自衛隊機を発売する際、日本らしさを演出するためか、当時の愛称を書き入れた製品が見られます。いまでも根強い人気を誇るF-104「スターファイター」戦闘機の場合、航空自衛隊機版のパッケージにはあえて「栄光」の二文字が描かれている製品がいくつも見られます。

 ちなみに自衛隊装備の愛称に関しては、2000(平成12)年ころにも陸上自衛隊が一般公募の愛称を付けたことがあります。89式小銃「バディ」やOH-1ヘリコプター「ニンジャ」、高機動車「疾風(はやて)」、155mmりゅう弾砲FH70「サンダーストーン」、87式偵察警戒車「ブラックアイ」など。しかしこちらもほとんど使われていません。筆者(リタイ屋の梅:メカミリイラストレーター)は面白いと思うのですが、自衛隊員ですら使わなければ広く浸透することなどありえません。愛称の知名度は製品の普及率などにも左右されるため、なかなか難しいものです。

【了】

【写真】寝台特急と同コンセプト? 「月光」と呼ばれた戦闘機

Writer: リタイ屋の梅(メカミリイラストレーター)

1967年生まれ。「昭和30~40年代の自衛隊と日本の民間航空」を中心に、ミリタリーと乗りもののイラスト解説同人誌を描き続ける。戦後日本史も研究中。

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コメント

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1件のコメント

  1. まぁくそだせえからね