「オートバイ」という概念の最果てにある「ケッテンクラート」 誕生の経緯とその顛末

バイクのようでバイクじゃない、かといってバイクのアイデンティティは持っている、そのような乗りものがWW2期ドイツで生まれた「ケッテンクラート」です。現代には生き残っていない絶滅種、なぜ生まれ、消えていったのでしょうか。

ケッテンクラートの「前輪」は飾り?

 戦車のように厳つい後輪に比べてオートバイ風味を残す、ケッテンクラートの前輪はいかにも貧弱そうです。「前輪って必要なの?」「どういう役割があるの?」という疑問が湧いてきます。

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大きくハンドルを切って旋回しようとしているが、前輪はあまり効いていないようだ。後輪履帯の左右回転数が変わる機構になっている(画像:ドイツ連邦公文書館)。

 ケッテンクラートはバーハンドルに連動して左右の履帯の回転数を変える機構になっており、必ずしも前輪が無くても操舵できます。しかし時速30km/h以上になると前輪の抵抗で微妙な操舵も可能になり、安定して走る補助輪として機能しました。一方、泥濘地では抵抗が大きすぎてジャマにもなったようです。実車では泥濘地で前輪を外してしまっている写真も残っています。

 結論として、前輪は必要だったのでしょうか。ここは現代目線で考えると答えを誤ります。当時ハーフトラックという車種は「前輪がある」のが機能上、必要不必要以前の「常識」だったのです。そもそもオートバイなのですから、前輪を無くすという発想はありませんでした。

小さな働き者で戦後も復興に働くが

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1943年に東部戦線で撮影されたケッテンクラート。豪雪地帯で、抵抗になる前輪が外されている(画像:ドイツ連邦公文書館)。

 ケッテンクラートは空挺部隊用支援車両から電話線敷設、飛行場でのジェット機牽引など、ほかの装軌車に比べてメンテナンスに人手も掛からず重宝される小さな働き者でした。民需用として森林地帯で馬のように働けるというコンセプトは、軍用車としても「当たり」だったようです。生産ラインの優先順位としては高くありませんでしたが、終戦までに約8800両、生産されました(資料により諸説あり)。

 戦後も1949(昭和24)年までに550両が民需用に生産されています。兵器として生まれ、使い勝手のよさから戦後も使われるという、フォルクスワーゲンとよく似た経緯を辿りますが、ハーフトラックというカテゴリーは中途半端で、技術的には行き止まりでした。

【了】

※一部修正しました(4月26日10時45分)。

【画像】クルマより人にやさしいかも ケッテンクラート操縦席の詳細解説

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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