操縦しにくいならキャタピラ曲げちゃえ! クルマと同じく“切れ角”ある戦車「テトラーク」

自由自在に曲がる履帯がポイント これなら運転もラク!

 一から開発された「テトラーク」は、1937(昭和12)年12月に試作車が完成します。その外観は「カーデンロイド・タンケッテ」とはまったく異なっており、高速走行に適した大直径転輪を使用した足回りを持つ車体に、ワンランク上のイギリス戦車と同じ2ポンド砲(40mm砲)を備えた全周旋回砲塔を組み合わせた斬新なものでした。こうして、機動性と攻撃力に優れた当時としては強力な軽戦車ができあがったため、イギリス陸軍参謀本部も制式番号「A17」を付与して1938(昭和13)年に採用します。

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後方から見た「テトラーク」軽戦車。乗員は車長、砲手、操縦手の3名と少なく、その結果、コンパクトにまとまったものの、運用上の都合では人手不足の感もあった(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 A17「テトラーク」は、路上での最高速度は約64km/h、不整地でも最高速度約45km/hを発揮し、航続距離は約225kmと、当時の軽戦車として満足できる性能を備えていました。そして最大の特徴は、冒頭に述べたとおり、ステアリング操作が自動車と同じくハンドルを回すだけで行える点でした。

 しかし、ハンドルで操縦するのならば、たとえばドイツの「ティーガーI」重戦車も、ハンドルでのステアリング機能を備えています。「ティーガーI」などと違って「テトラーク」が驚異的だったのは、なんと第1転輪を左右に傾ける(ステアリングする)と、それに合わせて履帯までが歪んで曲がる点です。これで旋回ができるため、結果、自動車の運転ができれば本車も運転できるというメリットがありました。

 もっとも、そのような特殊な操縦機能を備える弱点として、ステアリングできる転輪や、くねくねと動くフレキシブルな履帯が普通の戦車よりも脆弱なため、普通の戦車ならばあまり大きな被害を受けない、比較的小型の対人地雷などでも転輪や履帯に損傷を受けやすいといったことや、可動幅が大きいので間隙が広めという転輪や履帯の構造が原因で、有刺鉄線やワイヤーなどを巻き込みやすいという欠点も有していました。

【写真】空挺戦車として活用された「テトラーク」

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