「腕3本欲しい…」隊員泣かせ10年で退役 犬っ鼻戦闘機「セイバードッグ」日本への寄与

日本の領空は24時間365日、航空自衛隊によって守られています。しかし、自衛隊発足当初は夜間や悪天候時はアメリカ軍の手を借りていました。それを変えたのがF-86D戦闘機。しかし自衛隊員はこの機体にさんざん悩まされたそうです。

湿気と老朽化と真空管に泣かされた整備士たち

 一方、整備士からしてもF-86Dは手のかかる戦闘機でした。もともとアメリカ空軍の中古機であったため、ある程度使い古されていましたが、日本特有の湿気でその老朽化に拍車がかかりました。なかでも電子機器や油圧系統、特に大量の“真空管”と長大な電気コードで構成された「燃料制御装置」は整備が大変だったといわれています。

 大部分が日本国内でライセンス生産されたF-86Fと違い、F-86Dは全機アメリカ製のためスペアパーツも不足。予備の機体から部品を取ってきて直す「共食い整備」も行われるほどでした。

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F-86D「セイバードッグ」戦闘機の主武装である24連装ロケット弾発射機(2017年5月、柘植優介撮影)。

 このような状況からF-86Dは、新型F-104J「スターファイター」戦闘機の配備が進むとともに急速に数を減らし、1968(昭和43)年に全機引退したのです。

 こうして見ると、悪い点ばかり目立つF-86Dですが、同時期にアメリカ軍から移管された日本全国のレーダーサイトとセットで航空自衛隊が運用したことで、日本人が“近代的な防空システム”を学ぶ端緒となった「良い教材」でもありました。

 パイロットや整備員がさんざん苦労した電子機器や油圧装置の取り扱いに関しても、F-86Dが教材となることで、のちにF-104「スターファイター」やF-4「ファントムII」、F-15「イーグル」といった最新鋭戦闘機を導入・運用するにあたっても使いこなせる下地を作りました。

 またF-86Dは、当時としては高度な技術のカタマリであったことから、いくつかの機体は退役したのちも東京都立産業技術高等専門学校などの技術専門校に貸与され、教材として用いられています。

 F-86D「セイバードッグ」は、いうなれば日本の空を初めて夜通しで守ってくれた日本の空の“番犬”です。その亡骸は、死してなお日本の技術発展のために貢献してくれたといえるでしょう。

【了】

【貴重】航空自衛隊F-86D 現役時代の雄姿

Writer:

1967年生まれ。「昭和30~40年代の自衛隊と日本の民間航空」を中心に、ミリタリーと乗りもののイラスト解説同人誌を描き続ける。戦後日本史も研究中。

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