「腕3本欲しい…」隊員泣かせ10年で退役 犬っ鼻戦闘機「セイバードッグ」日本への寄与
日本の領空は24時間365日、航空自衛隊によって守られています。しかし、自衛隊発足当初は夜間や悪天候時はアメリカ軍の手を借りていました。それを変えたのがF-86D戦闘機。しかし自衛隊員はこの機体にさんざん悩まされたそうです。
空自初の全天候戦闘機F-86D「セイバードッグ」
日本の空を守る航空自衛隊では、領空を侵犯するおそれがある航空機に対し24時間365日、戦闘機の緊急発進、いわゆる「スクランブル」できる態勢を各地の戦闘機基地で整えています。
「対領空侵犯措置」と呼ばれるこの態勢が始まったのは1958(昭和33)年4月。最初のスクランブル任務についたのは北海道・千歳基地所属のノースアメリカンF-86F「セイバー」戦闘機でした。
F-86F「セイバー」は自衛隊初のジェット戦闘機として全国に配備されましたが、その後の戦闘機では当たり前となった索敵レーダーを装備していませんでした。ゆえにパイロットは、広い空のなか目視で目標を見つけるという、第2次世界大戦のほとんどの戦闘機と同じことをする必要があったのです。そのため、航空自衛隊がスクランブル任務を開始した当初は、夜間や悪天候時についてはレーダーを備えた在日米軍の戦闘機に頼っていました。
航空自衛隊が本格的に24時間体制の耐領空侵犯措置を行えるようになったのは、スクランブル任務につくようになってから2年後の1960(昭和35)年5月31日以降です。愛知県・小牧基地において日本初のスクランブル24時間待機がスタート。レーダーを装備したF-86Dの運用が始まったことで、行えるようになったのです。
F-86Dは、前出の自衛隊初となった戦闘機F-86F「セイバー」に似た外観を持つものの、機首に大きなレーダーカバーを取り付けているのが特徴です。この機首のレーダーカバーが“犬の鼻”に見えるところから「セイバードッグ」と呼ばれました。
このレーダーと連動する、コンピューターによる火器管制装置(FCS)をF-86Dは備えていることで、夜間でも悪天候時でも作戦行動が可能でした。
F-86D「セイバードッグ」は1958(昭和33)年1月、アメリカ空軍から航空自衛隊に4機が引き渡されたのを皮切りに、1961(昭和36)年までに合計122機が供与されます。しかし100機以上あったにもかかわらず、F-86Dは導入からわずか10年後の1968(昭和43)年にすべて退役してしまいました。なぜこんなに早く引退したのでしょう。
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