大型艦になぜ…フランス海軍の強襲揚陸艦「トネール」に見られる特徴と納得の理由

ミストラル級の性能は日本の島しょ防衛にも役立つか

 さらに、ミストラル級はこのアジマススラスターとバウスラスターを使って、錨を下ろさずに同じ場所にとどまり続けることができます。これは、たとえば敵の航空機によるミサイル攻撃や潜水艦からの魚雷攻撃などが想定される場面で、とくに役立つ機能といえます。

 というのも、錨を下ろした場合、艦を再び動かすためには錨を収容しなくてはならず、これでは敵の攻撃を回避するのに若干時間がかかってしまうからです。しかし、ミストラル級であれば、敵の攻撃を回避するためには単にアジマススラスターの推進を調整すれば済むため、即座に回避行動に移ることができるのです。

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「トネール」の艦橋(画像:アメリカ海兵隊)。

 こうした機能は、とくに近年、潜水艦や対艦ミサイルを増強させる中国が相手となるような日本の南西諸島防衛に際して、非常に大きな意義を有することになるかもしれません。今回、行われた共同演習においても、これら「トネール」の優れた機能が大いに役立ったのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は考えます。

【了】

【写真】船同士でビタ付け可能 「トネール」のウェルドック

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 列車のミストラル(季節風の名で、堀内孝雄の歌にも出てくる)は見れなかったな…牽引機関車単体には会えたけど… 

    それだけではなんなので…シュルクーフは19世紀初期の有名な体制側の海賊の名前だとか…