150トンで「引き金」に? 太平洋戦争前夜 小型すぎる米武装ヨットの危険な任務とは

旧日本海軍の機動部隊が真珠湾攻撃のため北太平洋を南下していたまさにそのとき、同じ太平洋の西の一隅では、アメリカ海軍の小さな武装ヨットがとある任務についていました。フネに見合わない危険すぎる任務、その「意味」に迫ります。

日本軍はツレなかった

 12月6日早朝に、防衛情報哨戒隊の1隻であるUSS「イサベル」(排水量710トン)が、インドシナ沖で日本海軍の特設水上機母艦「神川丸」から発進した零式水上偵察機に発見されます。しかし日本軍は、このエサには食いつきませんでした。

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USS「イサベル」。12月6日早朝に日本海軍の零式水上偵察機に発見されるが見逃がされる(画像:アメリカ海軍)。

「ラニカイ」は12月7日夜半(国際日付変更線の東側では12月6日)にマニラを出港し、カムラン湾に向かっていました。そして12月8日未明(ハワイ時間12月7日早朝)に日本海軍が真珠湾を攻撃します。これを受け、ギリギリのタイミングで「ラニカイ」には反転帰還命令が出されました。もはやカムラン湾に向かう必要はなくなったのです。

 太平洋戦争が開戦すると、「ラニカイ」にはマニラ湾の警備任務が与えられます。マニラにも日本軍が迫ってきますが、小型過ぎる武装ヨットは日本軍からも攻撃に値する目標とはみなされなかったようです。その後「ラニカイ」は、オーストラリアに脱出して戦争を生き延びています。

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1942年初めにオーストラリアのポート・ボウで撮影されたラニカイ。大きな2本マストが目立つ(画像:オーストラリア戦争記念館)。

「ラニカイ」がもっと早いタイミングでカムラン湾に突入、日本軍がこのエサに食いついていたら、太平洋戦争は日本海軍機動部隊の真珠湾攻撃ではなく、カムラン湾での「ラニカイ号事件」で始まった、と歴史に名を残していたかもしれません。真珠湾攻撃についてはいまだに陰謀論がささやかれますが、歴史の波間にはこうした様々なエピソードが漂っています。

「ラニカイ」はオーストラリアへ脱出後、同国海軍に改めてチャーターされます。そして1946(昭和21)年にチャーターを解除されますが、以前の所有者も権利を放棄し、行き先が無くなってフィリピン スービック湾のアメリカ海軍施設に保管されることとなります。やがて1947(昭和22)年の台風で沈没し、2003(平成15)年には、その残骸が海底で発見されました。

【了】

【図】危険すぎる任務 「ラニカイ」のたどった航路

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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