あり合わせ上等! で急造したけどけっこう使えたWW2期の戦車や自走砲など陸上兵器5選

新型砲 前が無理なら後ろにつけよう!「アーチャー対戦車自走砲」

 イギリス軍は、重装甲化するドイツ戦車に対抗するために、1942(昭和17)年には大型の対戦車砲である「17ポンド砲」を開発しました。もともと「チャレンジャー」巡航戦車に搭載予定だった砲なのですが、同車は計画が遅延、これを受けて開発が始まったのが、旧式である「バレンタイン」歩兵戦車の車体を流用し同砲を搭載する「アーチャー」対戦車自走砲です。

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「アーチャー」対戦車自走砲。手前が車体後尾になる(柘植優介撮影)。

 しかし、「バレンタイン」歩兵戦車の操縦席は中央にあって、そのまま砲を設置するのは無理で、長い砲身とバランスをとるため、移動する方向とは逆、つまり砲を後ろ向きに搭載するという案に行きつきます。

 しかも、急造というには開発期間もかかっており、1942年の半ばにプランがあがったものの、実戦投入は1944(昭和19)年10月でした。実はこの時期には既に、同じ砲をM4「シャーマン」戦車の車体に搭載した「シャーマンファイアフライ」の配備も始まっています。

 ただ、同車は自走砲ということで砲兵が運用しており、「シャーマンファイアフライ」とバッティングすることもありませんでした。さらに後ろ向きの砲は、先手必勝で撃ったあとすぐにその場を離脱できるということで、意外なことに高い実用性を発揮し、一部車両はエジプト軍に引き継がれ、第二次中東戦争でも使用されています。

敵がすごいヤツ走らせてるからウチも作ろう! 「ジープ」

 大戦序盤の欧州西方でのいわゆる電撃戦で、ドイツの小型軍用車「キューベルワーゲン」は、悪路を走り、偵察、連絡や人員輸送など幅広い任務をこなす車両として働きました。その性能に注目したのが当時のアメリカ陸軍でした。

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四輪駆動車の代名詞ともいえる「ジープ」の初期型(柘植優介撮影)。

 1940(昭和15)年6月には、のちに「ジープ」と呼ばれる車両の開発が検討され、すぐに軍は国内の企業135社に開発要請書と入札規則書を送付しましたが。あまりに細かい要求だったため、アメリカン・バンタム、ウィリス・オーバーランド、そしてフォードのわずか3社しか応じてくれませんでした。それでも、突貫で開発を行い1年後の1941(昭和16)年7月に量産化へこぎつけます。

 戦場に投入後は、急造した兵器とは思えない高性能を発揮し、戦後にアメリカ大統領となったドワイト・D・アイゼンハワーは、戦争を勝利に導いた兵器のひとつとしてこの「ジープ」を挙げるほどになります。他国にも輸出され、戦後は4WD自動車の代名詞にもなってしまいました。

【了】

※一部修正しました(5月28日11時25分)。

【画像】ホントは最初からこうしたかった…英「チャレンジャー」巡航戦車

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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コメント

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2件のコメント

  1. 記事で説明の有るラッチュバムを積んだマルダーは
    マルダーIIIですが、
    写真のマルダーは、恐らく7.5cm PaK40を積んだマルダーIII M型で少し違います。

    • ご指摘ありがとうございます。修正しました。