むしろ「開かず化」懸念も 明暗ある踏切の自動化 流れを決定づけた手動踏切の事故

人の目があることで抑制できる無理な横断

 自動式の踏切が普及したことで、踏切警手は姿を消していきましたが、人間が操作しないことで、逆に「開かずの踏切」と化してしまうケースもあります。

 例えば先述の竹ノ塚駅脇の踏切では、普通列車が駅に停車中のわずかな時間に踏切を開けることが可能です。しかし自動化された踏切では、接近する列車や不測の事態を考慮し長めに閉まります。

 しかし一方で、人間は不注意によってミスをします。竹ノ塚の事故は、同踏切を自動化させただけでなく、全国各地でわずかに残っていた有人踏切の廃止が一気に進みました。なお、竹ノ塚駅脇の踏切は、踏切警手に代わって警備員が配置されてきましたが、間もなく完成する立体交差化によって踏切自体が過去のものになります。

 では自動式の踏切が安全かと問われれば、必ずしもそうとはいい切れません。事実、事故も起こっています。

 無人の自動式踏切の場合、閉まっている踏切を強引に突破する危険行為が起きやすいという特徴があります。有人ならば踏切警手など人間が監視しているため抑止効果が働きやすく、無理な横断は激減するのです。

 人件費との兼ね合いもありますが、安全第一を考えるなら人間の目と判断、そしてコンピューター制御される自動式踏切のダブルチェック体制が望ましいところです。しかし技術の進歩や性能向上により、現実は踏切に限らずあらゆる場面での無人化・自動化が進められる潮流にあります。ゼロリスクを求めるのは不可能ですが、リスクをできるだけゼロに近づける努力や工夫を怠ることはできないのです。その策のひとつが、鉄道事業者がコロナ禍においても多額の予算を計上しながら推進する、立体交差化事業といえるでしょう。

【了】

※一部修正しました(7月6日10時40分)。

【思わず二度見】鉄道用踏切がある首都高の入口

Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 悪いのは踏切であって手動式は自動で遮断するよりは比較的危ないですね。
     それどころか未だに警報機すらない踏切がある。
     踏切での一旦停止を義務としていない多くの国では止まれの交通標識で一旦停止させているとか。
     また日本の事情で一旦停止をなくせば踏切の先が渋滞していることに気づかず線路にスタックしてしまうことも増えるでしょう。