爆弾が跳ねる!? イタリアが「変人」と名付けたドイツ急降下爆撃機で行った攻撃法とは

イタリア人が史上初めて行った新戦法

 その頃、イタリア空軍は限られた機数で地中海の艦船を攻撃する方法を模索していました。そのなかで、第97急降下爆撃航空群のジュゼッペ・チェンニ大尉は、急降下爆撃とは異なる反跳爆撃(スキップボミング)を着想します。

 これは、目標である敵艦船に対し、海面すれすれに迫りつつ水平飛行しながら爆弾を投下、爆弾は川面に投げた小石の様に跳飛しながら、敵艦船の舷側にぶつかり爆発するという攻撃方法でした。「水平爆撃」とも「急降下爆撃」とも異なる、“新戦法”といえる投弾方法であり、同様の戦法はアメリカ海軍やイギリス空軍も研究していましたが、史上初めて実戦で用いたのはイタリア空軍でした。

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チェンニ大尉が行った反跳爆撃(スキップボミング)の解説図。投下角度が急過ぎても高度が高過ぎても、舷側にはうまくヒットしない難しい戦法であった(吉川和篤作画)。

 1941(昭和16)年4月4日、ギリシャ北西部ケルキラ島付近の同国輸送船団に対してチェンニ大尉はこの反跳爆撃を敢行、輸送船「ササナ」(930トン)を見事撃沈し、護衛の砲艦「プッサ」(240トン)を大破させます。ギリシャ海軍はその新戦法に驚き、当初は魚雷攻撃を受けたと勘違いした程でした。なお第97急降下爆撃航空群は同月13日には水上機母艦「ツマイ」(1870トン)を大破させ、チェンニ大尉自身も続く戦果としてケルキラ湾で汽船「イオアナ」(1100トン)を沈めています。

 5月に入ると、同航空群は北アフリカのトブルク包囲戦に参加、イギリス輸送船団を迎え撃ちます。5月25日、7機のJu-87「スツーカ」は味方戦闘機による援護の下、タンカー「ヘルカ」(3740トン)と砲艦「グリムスバイ」(1990トン)を撃沈。6月29日には部隊はサルーム沖で駆逐艦「ウォーターヘン」(1110トン)を沈め、翌30日の船団攻撃では砲艦「クリケット」(625トン)を大破させました。

 ただ、この後は、消耗を続ける一方で大きな戦果を挙げることはなく、最終的に全機が本土に引き上げたため、イタリア人パイロットによるドイツ製急降下爆撃機による対艦攻撃は終わりを迎えています。

 Ju-87「スツーカ」というと、ドイツ軍による敵陸上目標への急降下爆撃や、3.7cm機関砲を搭載しての対戦車攻撃がよく知られますが、実はイタリア空軍も多数運用しており、対艦攻撃でも戦果を挙げていたのです。

【了】

【ドイツ機に負けた】失敗作のイタリア製急降下爆撃機

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「あなたの知らないイタリア軍」「日本の英国戦車写真集」など。

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