「カスピ海の怪物」北方領土へ 西側世界をザワつかせたその正体と果たした重要な役割

冷戦時代、ソ連に関するアメリカの諜報活動から漏れ伝わってくる情報のなかに「カスピ海の怪物」なるものが登場します。長らくそのニックネームばかりがひとり歩きしたソ連の特殊船舶「エクラノプラン」のたどった歴史を振り返ります。

エクラノプランの利点と欠点 なぜ普及に至らなかったのか

 エクラノプランには「船舶には実現できない高速性」「航空機より燃費がよく積載量も多い」「超低空飛行なので敵のレーダーにも捉えられにくい」などの利点がある一方、「旋回する際バンク角によっては水面に接触するため、これを大きく取れず旋回性能が悪い」「安定飛行時の効率の良さに反して離水する際の抗力が大きく、離水のためだけに強力なエンジンが必要でデッドウエイトになる」などの技術的問題がありました。

Large 20210820 01
1968年3月19日にアメリカの偵察衛星がカスピースクで撮影した、ルン級と見られるエクラノプラン(画像:アメリカ国家偵察局)。

 また既存の艦船用の港湾設備は使えず専用の設備を建設する必要があるなど、運用には莫大なコストが掛かりました。生産も思うように進捗しませんでした。

 1984(昭和59)年に推進役だったウスチノフ国防相が死去すると、まもなくエクラノプランの計画は縮小されます。そもそも使い物にならなかったのです。技術ファクターよりも政治ファクターが優先される、いかにもソ連の兵器らしい経緯です。

 A-90は最大120隻、建造する予定でしたが、結局、建造されたのは4隻で 1979(昭和54)年からカスピースクの海軍基地に所在する航空隊へ独立飛行隊として配備されていました。しかしほとんど稼働することなく順次スクラップになり、ロシア海軍に引き継がれた最後の1隻は2006(平成18)年に除籍します。

Large 20210820 02
A-90「オルリョーノク」。この艦番号26(MDE160)の機体はロシア海軍に引き継がれ、2006年まで在籍した(画像:ロシア国防省)。

 ルン級は2隻を建造する予定でしたが、1987(昭和62)年に1隻のみ完成しカスピ海でトライアルが行われ、1991(平成3)年末には完了します。カスピ海艦隊の第236エクラノプラン戦隊に配備されますが、2001(平成13)年12月には除籍になっています。それから長く放置されたのち、2020年にダゲスタン共和国デルベントのパトリオットパーク展示用に引き取られ、現在ニジニ・ノヴゴロドの造船所で整備されているようです。

【画像】1988年当時の「カスピ海の怪物」アメリカ側想像図

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. 海洋生物との衝突によるダメージは水中翼船より少ない…かも?

記事ランキング

  1. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  2. 「断固たる措置を講じる」首都高公式ブチギレ! 「公平性を著しく損なう」非常識ドライバーに“鉄槌”…一体何が?
  3. 「知らなかった!」SNSで話題に 高速道路の“2つ並んだ赤い三角コーン”、実は超重要な「ある合図」だった! NEXCO公式が投稿
  4. 神奈川県警の“バイクは自転車レーン走るな”投稿にツッコミ殺到! 「自転車にも車にもバイクにも迷惑です」…何が問題に?
  5. 史上最大の軍艦より135mもデカい!? 旧海軍「大和」を凌ぐ『エースコンバット8』の新ボス「陸上戦艦」の衝撃スペックとは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号