「カスピ海の怪物」北方領土へ 西側世界をザワつかせたその正体と果たした重要な役割
エクラノプランの利点と欠点 なぜ普及に至らなかったのか
エクラノプランには「船舶には実現できない高速性」「航空機より燃費がよく積載量も多い」「超低空飛行なので敵のレーダーにも捉えられにくい」などの利点がある一方、「旋回する際バンク角によっては水面に接触するため、これを大きく取れず旋回性能が悪い」「安定飛行時の効率の良さに反して離水する際の抗力が大きく、離水のためだけに強力なエンジンが必要でデッドウエイトになる」などの技術的問題がありました。
また既存の艦船用の港湾設備は使えず専用の設備を建設する必要があるなど、運用には莫大なコストが掛かりました。生産も思うように進捗しませんでした。
1984(昭和59)年に推進役だったウスチノフ国防相が死去すると、まもなくエクラノプランの計画は縮小されます。そもそも使い物にならなかったのです。技術ファクターよりも政治ファクターが優先される、いかにもソ連の兵器らしい経緯です。
A-90は最大120隻、建造する予定でしたが、結局、建造されたのは4隻で 1979(昭和54)年からカスピースクの海軍基地に所在する航空隊へ独立飛行隊として配備されていました。しかしほとんど稼働することなく順次スクラップになり、ロシア海軍に引き継がれた最後の1隻は2006(平成18)年に除籍します。
ルン級は2隻を建造する予定でしたが、1987(昭和62)年に1隻のみ完成しカスピ海でトライアルが行われ、1991(平成3)年末には完了します。カスピ海艦隊の第236エクラノプラン戦隊に配備されますが、2001(平成13)年12月には除籍になっています。それから長く放置されたのち、2020年にダゲスタン共和国デルベントのパトリオットパーク展示用に引き取られ、現在ニジニ・ノヴゴロドの造船所で整備されているようです。
海洋生物との衝突によるダメージは水中翼船より少ない…かも?