宇宙ステーションで事故、どの国の法律適用? 実はある国際ルール 野口宇宙飛行士に聞く
ISS(国際宇宙ステーション)は参加国が分担してモジュールを建造し合体させています。また、そこで暮らす宇宙飛行士も各国から集まってきており、背景や考え方もバラバラです。そのようななかで暮らす決まりゴトを野口聡一宇宙飛行士に聞きました。
宇宙は公海の上と一緒
1960年代以降、様々な国が宇宙開発を行うようになりました。昨今は、宇宙にビジネスチャンスを求めてさまざまな企業が乗り出していますが、とうぜん無秩序・無制限に何をしてもよいわけではなく、条約などの国際的な取り決めがあります。ISS(国際宇宙ステーション)計画ではどのように定められているのか、野口宇宙飛行士に尋ねました。
――ISSで何かあった場合の話を伺います。ISSは幾つかの国のモジュールが繋がってできていますが、これによって生じる問題です。仮に「ESA(欧州宇宙機関)の施設で、日本人の宇宙飛行士がアメリカ人と作業していて怪我をさせてしまった」というような、複数の国が関わるようなときに適用される法律は、事件のあったモジュールを所有する国の法律だ、という話を聞いたことがあるのですが、実際はどのようになっているのでしょう?
野口:厳密にいうと確かにその通りです。地球では公海上はどこの国のものでもありませんが、ここを航海する船に対する国際法を取り入れた考え方を宇宙でも用いています。各国のモジュールはつながってはいるものの実際にはそれぞれ運用方針が違うので、たとえば日本のモジュールでアメリカ人がイタリア人と作業していて怪我したらどうするというのは、お互いの請求権を放棄する「クロス・ウェーバー」(Cross Waiver)という考え方に基づいています。ですから実際にはギチギチと「あ、いま、線超えただろ」みたいな話は起こりません。
――それがISSの外側、たとえば船外での活動中に何かがあったとき、アメリカ製モジュールの外側だから、ロシア側モジュールの外側だから、と厳格に範囲を規定しないのも同じ考え方でしょうか?
野口:そうですね。そういう細かい問いはあまり本質的ではありません。「クロス・ウェーバー」ということで、互いに相手の権利に関して、請求権は行使しないと事前に確認しています。
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