沈む英独二大戦艦から生還! 船乗り猫「ブラッキー」と「不沈のサム」の航跡をたどる

スキャンダル? 「不沈のサム」異聞

「不沈のサム」のお話は、実はこれで終わりではありません。「ビスマルク」については多くの写真や記録により研究が進んでいますが、艦内に猫がいたという証拠が見つかっていないのです。オスカー/サムが「ビスマルク」に乗艦していたころの名前も分かりませんし、生き残りの「ビスマルク」乗組員も猫のことを知りません。

「ビスマルク」の沈没は、生存者が115人だけという過酷な状況でした。重油が浮き波のうねる海面で、人間ですら救助の駆逐艦の舷側をロープ伝いにやっとの思いで登ったのに、人命救助に奔走する駆逐艦が海面の破片の上に乗っていたという小さな猫をどうやって発見して拾い上げたのか、当時の海面温度なども含め、救出したとされる状況には不自然な点が多くあるという指摘がなされています。「サム」という猫が実在したのは確かですが、「不沈のサム」となった経歴は後から創作されたのではないか、ともいわれています。

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戦艦「ビスマルク」追撃戦で砲撃戦を演じたポーランド駆逐艦「ピオルン」の船乗り猫、スピッツキーとその母親(画像:帝国戦争博物館/IWM)。

 そうした船乗り猫もイギリスでは衛生上の観点から、海軍は1975(昭和50)年に、商船は1977(昭和52)年に、猫を含むペットの乗船が禁止されました。

 日本も、民間船には猫が乗り組んでいたようですが、日本海軍には体験談や戦記物でも筆者(月刊PANZER編集部)が調べた限りで公式な船乗り猫はいないようです。「密航者」はいたかもしれません。アメリカ海軍には、船乗り猫のエピソードはいくつもあります。またロシア海軍においては現代でも、任務に就く船乗り猫が紹介されています。イギリスでも個人所有の船にはまだいるようです。

「板子一枚下は地獄」という日本のことわざがあるように、危険と隣り合わせの船乗りのあいだには、世界的に様々な迷信やジンクスがあります。オスカー/サムという猫はどこから来たのか、人間の船乗りたちの船乗り猫への様々な思いが「不沈のサム」の伝説を創り出したのかもしれません。

【了】

ロイヤルネイビー(英海軍)の一員だった猫たち

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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1件のコメント

  1. 誰が書いたんだ?「乗り組む」になってるよ。