海外邦人救出 自衛隊はどう臨むの? 装備 システム…輸送機だけじゃないその「備え」

装備だけじゃない システム構築も「備え」

 現地の避難者が空港まで集合できても、そのまま輸送機に乗せて日本へ飛び立つというわけにはいきません。混乱に乗じてテロリストが混じっていては大変ですので、本人確認などの手続が必要です。活動拠点にはそのための退避統制センター(ECC)が設置され、外務省と自衛隊が共同で運用します。

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訓練にて、退避統制センター(ECC)に仮設されたチェックゲートの金属探知機で、空自隊員が対応に当たっている(2020年12月2日、月刊PANZER編集部撮影)。

 これには国際空港にあるような、身分証明書と出国管理の手続きに必要な備品、衛星回線通信機器、金属探知機、身障者対応、救護所などが用意され、また人々を誘導する導線まで考慮されます。話は少し変わりますが、自衛隊のワクチン大規模接種会場の導線のスムーズさは多くの人が評価しています。自衛隊の群衆整理のノウハウは、総火演(富士総合火力演習)などのイベントでも実績を重ねています。

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訓練の様子。輸送機の搭乗要領を示した手書きのボーディングボード(2020年12月2日、月刊PANZER編集部撮影)

 これら複雑なミッションには、訓練が欠かせません。多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」をはじめ、国内でも様々なパターンに対応する各機関合同の訓練を実施しています。装甲車を駆使した救出作戦などは、任務のほんの一部に過ぎません。

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訓練の様子。対応する部隊には衛生科隊員や司法警察員の職務を行う警務隊も加わっており、あらゆる事態に対応できるよう備える(2017年12月13日、月刊PANZER編集部撮影)。

 またミッションを成功させるには、当該国の情報をリアルタイムに収集することが重要で、ヒューミント(人を介した諜報活動)も重視されます。今回のアフガニスタンでは、アメリカ軍がタリバンと連絡調整して退避者を空港に集めコントロールしました。敵対関係にあるような両者ですが、これも日頃のヒューミント活動があったからこそです。

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紛争地には各国報道陣も集まり、その対応も必要になる。写真は訓練時のもの(2017年12月13日、月刊PANZER編集部撮影)。

 海外で遭遇する最大級のトラブルが、現地の紛争に巻き込まれることでしょう。そのような時に日の丸を付けた飛行機が来てくれたら、これほど心強いことはありません。日本人が海外で積極的に活動する安心安全のためにも、法整備、ハード/ソフトを維持強化して「備え」は大切です。

【了】

【写真】押し寄せる群衆も想定済み 自衛隊の対応は ほか

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

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1件のコメント

  1. 焦眉の急 

    台湾24000人 

    韓国39000人 

    全員が脱出を希望はしないだろうが、何回往復すれば良いのだろう?