「旅客機も空中給油できれば航続距離爆伸びじゃん」実際できる? 実現に必要な要素とは

「ハード」の面から見る旅客機の空中給油の可能性

 また、空中給油は、設備の面でもハードルがあります。空中給油を実施するためには、給油する側にも、される側にも特殊な装備が必要であり、通常は民間機には装備されていません。

Large 03

拡大画像

給油ポッドのドローグでF/A-18Eに給油するKC-46A(画像:ボーイング)

 給油の方法は主にふたつあります。たとえばアメリカ海軍の場合、プローブ・アンド・ドローグという方式を採用しています。給油機側が先端に落下傘のような機構のついたパイプ(ドローグ)を出し、給油される側の機体は、それを空中で差し込みます。比較的運動性の高い機体で使用される方法です。

 一方、アメリカ空軍ではフライング・ブーム方式という方法が採用されています。ボーイング社が開発した、給油機の後部に装備された「ブーム」と呼ばれる太い管を用いて燃料を受け取る方法です。比較的大型機に対応できるというのが、この方式のメリットです。

 これらの実現にはいずれも、専用の機構が燃料供給を受ける側の機体にも必要です。旅客機の場合、燃料の給油口は主翼の下が一般的です。少なくとも、空中給油のための給油口の位置を機首上部に設け、そこから主翼の燃料タンクまでパイプを伸ばす機構を追加する必要があります。こうなると、結構抜本的な改造となり、費用も莫大ですし、重量もその分重くなり、その分搭載量が減ります。メンテナンスも大変なことになります。やっぱりコスパが悪い…となるわけです。

 となると、やっぱり今のまま「給油は地上でのみ行う」というのが一番安全で確実な方法です。航続距離は燃費の良いエンジンを積んだ新型機が開発されれば多少は伸びますので、そちらに期待した方が現実的なのかもしれません。

※ ※ ※

 なお、ジェット旅客機の長距離性能は、この数十年間、頭打ち状態であったように思います。これは、旅客機として要求される長距離性能が、需要から判断すれば、アジア~アメリカ線、アジア~ヨーロッパ線の直行便をカバーできれば十分であるためです。距離にすると長くとも1万kmから1万5000kmほどの性能といったところでしょう。

 ただ、冒頭のA321XLRは単通路旅客機では世界最長の航続距離をもつとうたわれているほか、エアバス社からは、航続距離1万8000kmをうたう超ロングフライト使用旅客機A350-900ULRなども出現しています。これらは現代では特殊なタイプですが、こういった旅客機の出現は、航空業界の変化につながるのかもしれません。

【了】

世界イチ派手!? & 空自新型の「空中給油機」など

Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)

成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

3件のコメント

  1. 例えば
    一番有名な
    アメリカ大統領専用機
    通称「エアフォースワン」
    これには空中給油装置が付いてるから
    空中給油を受けたら、飛行距離は延びるけど
    エンジンオイルは給油出来ないから
    その限界が約72時間
    大統領が乗ってるのに
    そんな危険な事は
    まず無い❗

    メインが故障やトラブルが起きたら
    直ぐに
    予備機に移る

    • え?え?70時間って何が根拠?
      仮にもエアフォースワンなので、
      秘密の隠し機能が有るかとは思いますけど、
      標準仕様で有れば20時間程度かと思われますが。

    • 何だ、WIKIのコピペか。