宇宙船は飛行機それとも船? 組織ごとに違う宇宙飛行士の訓練方式 野口宇宙飛行士に聞く

宇宙飛行士になるためには、高い倍率の選抜試験をくぐり抜けた上で長く厳しい訓練を受ける必要があります。加えて訓練内容は国ごと組織ごとに異なったものだといいます。ロシアとアメリカ両方を知る野口宇宙飛行士に聞きました。

米ロ3種類のロケットで感じた設計思想の違い

 2021年秋、日本では新たな宇宙飛行士選抜試験が始まる予定です。高い倍率が予想されますが、宇宙飛行士になるためには試験に合格した上で、長く苦しい訓練を受けなければなりません。これまでアメリカのスペースシャトル、ロシアのソユーズ、民間のクルードラゴンの3種類で宇宙に行ったことがある野口宇宙飛行士によれば、訓練内容は国ごと組織ごとに異なるという話でした。

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T-38練習機で飛行訓練を行う野口宇宙飛行士(写真:JAXA/NASA)。

 宇宙へ行くための「訓練」の違いについて、野口宇宙飛行士に聞きました。

――野口さんはこれまでスペースシャトル、ソユーズ、クルードラゴンの3機種に乗った経験がおありですが、大きな違いは、どのあたりになるのでしょうか?

野口:最近乗ったのはスペースX社の「クルードラゴン」ですが、この宇宙船は過去の宇宙開発から学んで、イイとこ取りをしています。スペースシャトルのように再利用できるところもありつつ、ソユーズのように割り切った設計も採用するという両方の特徴を併せ持っています。

 この割り切った設計というのは、やみくもに簡素化、コストダウンをしたというのではありません。十分に検討して内部構造を簡単にして操作しやすくしたうえで、カプセル型の機能の簡便さ、安全さというのを狙っていると言えるでしょう。帰還時はパラシュートが開いて降りますが、これもソユーズ、あるいはシャトルより前のアメリカの方式と同じです。

 スペースX社や、この後宇宙飛行をするであろうボーイング社やブルーオリジン社(注:インタビュー後にブルーオリジン社は「ニューシェパード」で有人宇宙飛行を達成)など、次世代の有人宇宙船を作っている企業に共通するのは、やはり宇宙船の再利用で一気にコストを下げるというのを意識している点です。このあたりは民間企業ならではのノウハウがあるのだと思います。

 我々、宇宙関係者はこれまで、宇宙に行く乗り物として、「ロケットは1回使ったらおしまいでしょ」と半ば宗教的に信じていたんですが、新世代の宇宙産業は「なんで1回だけなの」といいます。これまで信じられていたことへの疑問から始まって、今は再利用型の方が主流になりつつあります。我々は「なんで1回で捨てなきゃいけないの」という問いに答えないとなりません。そういう時代に入ってきていると言えますね。

【知られざる宇宙飛行士訓練の様子】

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