その差は鉄道の線路幅にあり? ウクライナとポーランド ロシアの脅威度が段違いなワケ

欧州における鉄道の線路幅がバラバラであることの影響

 ロシア鉄道のゲージ(線路幅)はいわゆる標準軌(1435mm)よりも幅の広い広軌(1520mmまたは1524mm)で、ヨーロッパでは旧ソビエト連邦内とフィンランドでしか使われていません。スペインも広軌ですが、ゲージのサイズがロシアとは違います。

 このゲージの違いが、ロシア軍の作戦行動に大きく影響します。バルト三国、ウクライナを含む旧ソビエト連邦内なら広軌で統一されており、鉄道でスムーズな兵站線が引けます。一方ポーランドには、ロシアからウクライナのキエフを経由して南部のスワフクフまで、1本だけ広軌の鉄道が通っていますが、ほかは国境のごく一部を除き標準軌であり兵站線を連続できません。

 ゲージが違えば鉄道を使った兵站線はそのまま連続することができず、積み替えかゲージの変更(いわゆる改軌)工事を行わなければなりません。台車交換や軌間を変更できるフリーゲージ方式もありますが、しかし結節点には設備が必要でスムーズな物流を妨げますし、ロシアの貨物列車はほとんど対応していません。

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連結された平台貨車の上を地上から誘導されてそろそろと進むBMP-1歩兵戦闘車。落下したら大ごとで慎重に運転しなければならない(画像:ロシア国防省)。

 積み替えることは単純な話ではありません。というのも、戦車、装甲車、車輌などの大物から、弾薬、燃料などの危険物、食料、機械部品から医薬品、被服に至るまで多種多様の大量の荷物を扱わなければならないからです。積み替え中継点ではそれらの荷下ろし、受取、仕分け、再梱包、適切な保管と管理も必要です。敵の攻撃やゲリラ襲撃も警戒しなければなりません。兵站中継点は、敵にしてみれば狙い所に違いないからです

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燃料が無くては、戦車は動けない。タンクローリーから給油されるT-72戦車。タンクローリーも鉄道で前線まで移動してくることが多い(画像:ロシア国防省)。

 ゲージの違いで、WW2独ソ戦のドイツ軍も苦労しました。鉄道のおかげで守るに易く攻めるに難い環境なのですが、ロシアが軍事的理由から広軌を選択したというわけではなさそうです。ロシアで敷設が始まった1830年代当時は広軌優位論が盛んであり、他国との連結はあまり考慮されていませんでした。広大なロシアでは標準軌より広軌の方が、輸送力が大きく有利と当時は考えられており、これが理由のようです。

ウクライナのヤバさ際立つ ロシア周辺の広軌路線網

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